藤澤五月の劇的ショットを成功させたチーム力 じんわり理解できた吉田知那美の言葉

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勝負を決める最後の一投を投げるのは

 盛り上げたいメディアやファンにありがちな大いなる誤解。実際にその役を担う当事者(スキップ)にすれば、「よっしゃ、やっぱ来たか」とでも言いたくなる場面だ。そのためにスキップは存在し、それができるから日本代表のスキップを担っている。

 野球で言えば、試合を決める一打を託される宿命の4番打者か。いや、野球は流動的でどの打順にチャンスが回るかわからない。だが、カーリングはほぼ決まっている。多くの試合で勝負を決める最後の一投を行うのはスキップなのだ。それが、カーリングであり、それがスキップだ。

 決勝戦やメダルのかかった準決勝なら、さすがのスキップも特別な興奮状態になるかもしれないが、ビビッてしまうような選手はこの場所にはいない。

「最後よくさっちゃんが決めてくれたなと思います」

 リードの吉田夕梨花が藤澤を称えた。もちろん、それができる藤澤は本当に頼もしい存在だし、一次リーグの第3戦でやってのけたことは実力と好調の証だ。北京の会場の氷と石(ストーン)を読み切れている証拠でもある。

ひとりで投げたものではない

 劇的な瞬間を見て、どうしても藤澤個人の力に驚嘆しがちだが、それより注目すべきは、この一投が決して「藤澤ひとりで投げたものではない」という、カーリング独特の競技性やチーム力の本質だ。

 大会前からカーリングに注目していた私にすれば、デンマーク戦の逆転劇は、カーリングの深み、チームで戦う面白さをはっきりと感じる一投だった。

 1月半ば、カナダ合宿中に行われたリモート記者会見で、サードの吉田知那美がこう語っていた。

「スキップがどの選手より勝敗に結び付く1投を投げなければいけないのは事実なので、そういう部分を私だけでなく、セカンド、リード、リザーブもコーチも全員でサポートしていく気持ちがないと最後の一投は決まらないと思っているので。ゲームの中でよりそばにいて、より近くでいちばん話をするのは私。サードとして投げる石もそうなんですけど、いかにスキップの石を決めやすくするかもサードの大事な仕事だというのは、リンドコーチ(ジェームス・ダグラス・リンド日本代表コーチ)からもずっとずっと長いこと言われているので」

 全員でサポートしないとその一投は決まらない。私は、精神論としては理解できるが、藤澤ひとりが投げる最後の一投に全員の力を注ぎ込むという現実的なイメージがピンと来なかった。だが、デンマーク戦を見て、吉田の言葉の意味がじんわりと理解できた。

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