快挙の「ドライブ・マイ・カー」 三浦透子と「カムカムエヴリバディ」の奇しき縁

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移籍で干されたことが奇貨に

 もっとも、ドラマに出られない分、映画出演の時間に恵まれた。1999年には濱口監督の東京芸大大学院時代の恩師・黒沢清監督(66)の「ニンゲン合格」に主演する。以来、計4本の作品に出て、「黒沢組の代表的俳優」と呼ばれるまでになった。

 黒沢監督は「スパイの妻(劇場版)」が2020年のヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)に輝くなど世界的映画人。オタギリジョー(45)ら信頼を寄せる俳優も数多い。黒沢作品への参加は西島をより大きくしたはずだ。

 MHKのドラマディレクターの1人によると、西島の素顔は「誠実で無骨。派手なところがない。良い意味で俳優さんらしくない人」なのだという。映画をやりたいという理由で売れっ子俳優の座を捨ててしまったのだから、確かに無骨だろう。

 誠実な人柄は役を演じていても透けて見える。家福もそうなのだが、誠実な男を演じさせたら、右に出る俳優はいないのではないか。

「西島さんにしか出来ない役って実は多いんです」(同・NHKのドラマディレクター)

「世界の濱口」の独特の演出

 一方、濱口監督の演出は独特。俳優陣に脚本を徹底的に読ませる。1人きりではなく、全員を集め、読み合わせを行う。

「今、これほど本読みを重視する監督はいない」(映画ライター)。

 すると何が起こるかというと、俳優にとってセリフは完全に自分の言葉となる。役柄の感情まで自分と一体化する。役柄の思いを表現するためには、話し方や動作をどうしたら良いのかが自然と分かるようになるという。

 近年の民放ドラマは製作期間が十分とは言い難いため、読み合わせを含めたリハーサルの時間がつくりにくい。一方、読み合わせに途方もないほど時間を費やす濱口作品は「ドキュメンタリーと区別が付かない」(同・映画ライター)と評されている。

「ドライブ・マイ・カー」は昨年のカンヌ国際映画祭で濱口監督と大江崇允氏(40)による共同脚本が、脚本賞を受賞した。今年1月には市川崑監督の「鍵」(1959年)以来となるゴールデングローブ賞の非英語映画賞を受賞した。

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