免疫機能に効く「最強のお鍋」の作り方 抗酸化物質が含まれる食材は?
本誌(「週刊新潮」)では「野菜スープ」がもたらす健康効果について何度か取り上げてきたが、「毎日作って食べるのは結構大変」という人も多いに違いない。そういう人は冬の定番料理である「お鍋」で代用してはどうだろうか。ノンフィクション作家・奥野修司氏がレポートする。
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数年前の冬のことだ。故前田浩・熊本大学名誉教授から「野菜スープ」を教えてもらって毎朝飲むようになっていたが、健康のためとはいえ、同じスープだとやはり飽きてくるし、違った方法でスープを摂る方法はありませんか、と尋ねたことがあった。すると前田名誉教授は笑いながらこう言った。
「この寒い時期、やっぱり鍋でしょう。鍋料理は最強の野菜スープですよ。鍋を囲んでおしゃべりしながら食べていたら、5分以上は煮込むはずです。食べる頃には野菜の細胞膜が壊れてファイトケミカルが外に出ています。鍋の汁には野菜のビタミン類やポリフェノール、フラボノイドなど栄養素がたっぷり入っています。鍋の具を食べたあとで、最後にご飯を入れて雑炊にして食べませんか? 雑炊を食べることで汁を飲み干せば野菜スープを飲むのと同じです。それに、野菜スープは野菜だけですが、鍋料理は種類によって魚や鶏肉、カキなどを入れますね。すると、タンパク質も同時に摂れるので、栄養バランスからいっても最強なのです」
抗酸化物質などファイトケミカルを摂るには「野菜スープ」と思い込んでいたが、基本は野菜を煮込むことなのだから、鍋料理を含めて和食には「野菜スープ」と同類のものはたくさんあるということだ。考えてみれば、野菜カレーも同じだ。野菜を煮込んだあとカレー粉を入れるが、カレー粉の主成分はポリフェノールのクルクミンを含むターメリックだから、より多種類の抗酸化物質を摂ることができるはずである。
余談だが、前田名誉教授はこんなことも言っていた。
「胃がんとピロリ菌感染との関係を調べると、なぜかマレーシアにはピロリ菌感染者が多いのに胃がん発症者が少ないそうです。恐らくカレーに含まれているクルクミンなどが活性酸素を消去するからでしょう。もしかするとカレーは胃がんの予防食かもしれませんね」
タンパク質も摂れる
さて、「最強の野菜スープ」について、私たちの免疫機能が野菜を食べることで強化されることはこれまでも本誌で何度も述べたが、それにはタンパク質も必要なのである。タンパク質は筋肉など体を構成する材料として不可欠だが、それ以外に免疫システムを維持するための抗体や免疫細胞、それにホルモンや酵素などを作るのにも必要だから、「野菜スープ」だけ食べてもタンパク質が不足すれば免疫機能も低下してしまう。
また、パセリやブロッコリー、カリフラワー、ホウレンソウなどにはグルタチオンという強力な抗酸化物質が多く含まれるが、実は豚肉、牛肉、鶏肉、とくにそのレバーには野菜以上にたくさん含まれている。この時期によく食べられるカキ鍋のカキもそうだ。そのうえグルタチオンは、慢性肝炎、口内炎、皮膚炎などの治療薬として承認されているほど抗酸化力が強いことから、アンチエイジングに効果的と注目されているのだ。
「野菜スープ」と一緒にタンパク質が摂れる鍋料理は非常に栄養バランスのいいメニューといえる。
ところで、鍋料理の最後に雑炊でしめることはよくあるが、白米の代わりに発芽玄米があるなら、より栄養価が高くなるはずで、その理由を前田名誉教授はこう語っていた。
「発芽玄米の胚芽には子孫になるDNAが全部入っていて、その周囲には、DNAが壊れないように、活性酸素を消去する抗酸化物質が充填されています。発芽が始まるとあらゆる酵素が活発に動き出すので栄養価が高いのです。発酵して吸収されやすくなった発芽玄米を食べ続けると、腸内細菌叢が変わります。腸管の細菌叢が変われば免疫がより高まり、がんにもなりにくくなるのです」
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