スマイルジャパン ベテラン「久保英恵」、絶好調の「床姉妹」…注目選手を一挙紹介
テレビ中継のアナウンサーは、彼女が氷上に上がるたびに、いちいち「39歳の」という枕詞をつける。ベテランFW久保英恵(はなえ)の年齢をわざわざ強調するのか。
2月8日、北京五輪で行われた女子アイスホッケー一次リーグB組最終戦。対チェコ戦でその怒りのショット(?)が炸裂、値千金のゴールで3対2とし、スマイルジャパンが3勝1敗で見事に予選リーグ首位通過を決めた。
4度目の五輪にして初の決勝トーナメント進出はこれより先に決めていたが、「首位通過」が当面の目標だった。一次リーグで首位通過すれば、決勝トーナメントでA組の米国やカナダという突出した強豪といきなり当たって終わってしまうことを避けられる。世界ランク6位の日本は下位のB組5か国にまとめられ、上位3チームがカナダ、ROC(ロシアオリンピック委員会)、米国などの上位A組の5か国と合わせた8か国でトーナメントを争う。かなり変則的な予選リーグだ。
チェコ戦は2対2のまま5分間の延長でも決まらない。サッカーでいうPK合戦のPS(ペナルティショット)戦にもつれ込んだ。二人目に登場した久保はリンク中央からパックを運び、GKと対峙するやフェイントをかけて相手を微妙に動かして股間を抜いた。きれいに抜くまでにはいかず、パックはGKの内足に二度当たった。一瞬、見失ったか、後ろを振り返ったGKはゴールライン上をゆっくり動くパックを慌てて抑えたものの、ぎりぎりでラインを越えていた。神風が吹いた。
日本側のPSの得点は久保だけだったが、守護神のベテランGK藤本那菜(32)がチェコの5選手すべてのシュートをブロックした。
FWの大澤ちほ主将(29)は「メダルを目指してやってきた。すべてを出し切って準決勝に駒を進めたい」と気を引き締めた。
久保は初戦のスウェーデン戦ではDF小池詩織(28)の先制得点で、フェンス際から見事にアシストしていた。
過去、五輪で二度とも初戦で負けていたスウェーデンを下して勢いに乗ったスマイルは続くデンマーク戦は6対2で大勝。三戦目に中国と対戦。1対1の大接戦だったが延長からPS戦にもつれて競り負けた。しかし同点ゴールやPSを決めた選手ら主力は大柄な金髪碧眼の女性。チームは22人中10人を北米から帰化させている。見ていて「どこが中国チームやねん」と言いたくなる。
開催国特権で1998年の長野五輪に初出場した大和撫子たちは世界に歯が立たず全敗。その頃、抜群のシュート力、巧みなポジション取りを備える苫小牧市出身の久保は15歳で全日本入りしていた。その後、日本は出場権利を獲れず、10年のバンクーバー五輪の出場権を逸した時、失意の久保はいったん引退した。しかし、札幌五輪代表で国土計画の名監督だった若林仁氏に「日本にはまだあなたが必要」と説得されて現役復帰したという。その後はスマイルジャパンを引っ張ってきた。5年前に苫小牧での全日本合宿を取材に行った時も久保は誰よりも入念に柔軟運動をしていた。
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