ロッキンを潰した張本人が「いつかまた茨城で」と発言 ますます魅力度を下げてしまうのでは(中川淳一郎)

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 史上最強の「お前が言うか!」案件(ネット用語では「おまいう案件」)が登場しました! 1月21日、毎日新聞の電子版に掲載された〈「ロッキン、いつかまた茨城で」県医師会長が期待 千葉移転に驚き〉という記事です。

 茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園で開催されてきたロックフェス「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル(ロッキン)」が、今年からは千葉で開催されることになった件です。茨城県の医師会が2021年8月の開催に対し、7月に主催者のひとつ・茨城放送に乗り込み、その様子をHPで公開したのです。

「今後の感染拡大状況に応じて、開催の中止または延期を検討することや、仮に開催する場合でも更なる入場制限措置等を講ずるとともに、観客の会場外での行動を含む感染防止対策に万全を期すことを要請しました」

 医師会として、ロッキンに多くの人が来ることでコロナ感染が拡大することを危惧したわけですね。結果的にこの条件では開催できないと、主催のロッキング・オン渋谷陽一氏は実施を断念、2021年のロッキンは中止となりました。2022年1月、今年は千葉市蘇我スポーツ公園で開催するという旨渋谷氏から発表されたのです。

 これを受け、茨城県医師会の鈴木邦彦会長が1月21日の定例記者会見で「移転は驚いており、いつか再び当地で開催されることを期待する」と発言しました。

 バカヤロー! 2019年には33万7421人が参加し、茨城県に大きな経済効果をもたらしたイベントを潰した張本人が何を言うか! 昨年7月の中止発表の際、「地元民にとってはうるさいだけ」「変な人が来るから中止は歓迎」といったネットの声はあったが、明らかに地元経済は潤ったわけですよ。

 私のように地味な地方都市のひとつである佐賀県唐津市在住者からすれば、観光客の減少は痛い、ということは分かっている。観光客が来るのを嫌がるのは年金生活者と、閉鎖的な人が中心。「全体最適」を考えず、自らの保身ばかり考えている。

 当然、茨城の医師会としては、「県外から変な連中がたくさん来て医療崩壊になったらたまったもんじゃない」と思ったことでしょう。そして、「別にこのイベントがあろうが、病院に来る人の恒常的増加は見込めない」という判断があったのかもしれない。

 しかしね、医師会が圧力団体のように、「ウチの県でコロナ拡散イベントはやらないでくれ」と要求をし、その結果中止にされた渋谷氏らが今後茨城で正直やりたいと思いますか? あり得ないでしょうよ。鈴木会長は一度追放した人間に帰ってきてくれ、と言っているに等しく、そんな道理通るわけがない。

 県民の皆さん、茨城の大事なイベントを蔑ろにした医師会の会長が都合の良いことばかり言ってるんですよ。さらには、「茨城県民はビビりのバカ」といった論調も昨年夏、ネット上ではかなり見られましたし、「都道府県魅力度ランキング」で毎年最下位を栃木と佐賀と争っているといったことも論点になりました。

 こんな要求をすると茨城県はますます最下位争いの常連になっちゃうよ、と佐賀の私は思います。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2022年2月10日号掲載

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