阪神・高山俊 このままでは終われない…かつての新人王、野球人生をかけた闘い
右半身が伸び上がる動きと……
動画サイトの「YouToube」で、ルーキーイヤーの2016年当時の打撃フォームを探し出してみた。
左の耳元付近で、グリップを上下に小さく動かしながら、相手投手のモーションに合わせて、右足を上げていく。そのつま先が、ホームベースの後ろから左サイドへ、円を描くように動いてから着地し、インパクトを迎える。そうした一連の「動」の中で、高山はボールを捉えていた。
翌2日の打撃練習。75スイングの内訳は、右へ28、センターへ21、左へ26。広角へ打ち分ける、その巧みなバットコントロールは健在だ。右足を上げ、下ろす。スタンドから見ていると、投球に対してタイミングを取っていく動きの中で、右肩やグリップの位置が、ほとんど変わらない。
右足が着地したのが合図のように、バットがすっと振り下ろされていく。6年前より、動きがシンプルに映る。「静」から「動」への動きが、何ともスムーズだ。
元阪神監督の和田豊・テクニカルアドバイザーが、ノックバットを片手に、高山のケージに張り付いていた。ケージを出てきた高山に、何度となく、和田がジェスチャー入りで見せたのが、右半身が伸び上がる動きと、懐の前あたりを指さし、そこにバットを出していく動きだった。
「いいところを消したらアカン」
和田に、指導のポイントを聞いてみた。
「彼は、独特のものを持っているからね、そのいいところを消したらアカンと思うんだよね。伸び上がっても、彼は打てる。コンタクトの技術にたけているからね」
内角低めに、打撃投手が投げ損なうことがある。その厳しいコースは、試合ならばストライクと取られるかもしれない。それを高山は、投手側の右半身を伸び上がらせ、バットをひざ元に落としながら、簡単にレフト側へカットできてしまう。
「そういう技術を、みんなは持っていなくて困るし、苦労するのに、高山はもともと、その技術を持っている。それがいい方向にも、悪い方向にも出てしまうんだ。幅が広すぎるというのかな。技術があるから、色々なことができてしまう。それは、カウントが追い込まれたら生きてはくるんだけど、彼は2ストライクまででも、体が勝手に反応する。それができてしまうことを、プラスにしていけばいいんだよね。もともとそういう選手なんだから」
打てない、のではない。打て過ぎてしまうのだ。つまり、どんな球にでも、瞬時に反応できてしまう。その衝動を、むしろ抑えなければならない。和田の「伸び上がる動き」は、そうならないようにという“意識付け”なのだ。
「ワンポイント、一発で仕留めたいと行きがちなんだけど、長く見て、というタイプの選手だから、それを意識してやっているんだろう。線で打ちたいと思ってやっているんだね」
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