「東芝」株主総会でカウントされなかった1310通の議決権行使書 背景に「先付け処理」なる慣例
1.1%分が無効
上場企業にとっての「最高意思決定機関」は株主総会である。ところが、その正当性を揺るがしかねない事態が生じている。2020年7月31日に開催された「東芝」の株主総会によって、「特別な慣例」が浮き彫りになったのだ。
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車谷暢昭(くるまたにのぶあき)社長続投には、大株主の「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」と「3D・インベストメント・パートナーズ」が異を唱えていた。総会では車谷社長の取締役再任への賛成は57.96%に達し、「もの言う株主」の主張は退けられた。
この結果に、東芝株式の4.2%を保有する3Dは疑念を抱いた。企業戦略コンサルタントによると、3Dは、東芝の証券代行業務を請け負う「三井住友信託銀行」に調査を申し入れ、4.2%の議決権のうち1.1%が“無効”との回答を得たという。
総会に向けて、3Dは7月27、28の両日、三井住友信託に議決権行使書を郵送している。
「28日に送ったのは、3.1%弱の議決権行使書でした。代理人の香港上海銀行を通じて送り、翌29日には到着。ところが、前日の27日にも同じく代理人である野村證券を介して議決権行使書1346通を送ったのですが、そのうち1310通、1.1%分が無効となる株主総会当日の到着と見做されたのです」
その背景には、「特別な慣例」があった。
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