韓国バブルに崩壊の兆し 不動産が一斉に値下がりも国民は「まだ大丈夫」
死に物狂いの韓国銀行
――韓国バブルははぜるのでしょうか?
鈴置:分かりません。韓国銀行も軟着陸させようと必死です。昨年初めから、総裁自らが国民に「カネを借りて株を買うな」と訴えてきました。「いずれ金利を上げるぞ」と警告もしました(「『金融危機がやって来る』と叫ぶ韓国銀行 年内利上げを予告、バブル退治も時すでに遅い?」参照)
――軟着陸できるのでしょうか?
鈴置:それも分かりません。ただ、指摘すべきは1990年代の日本と比べ、韓国にはハンデキャップがあることです。急速に増える財政赤字です。バブルが崩壊する前から文在寅政権がバラマキを実行したため、財政赤字が急増したのです。
今後、人口減少によって税収が頭打ちとなれば、その赤字幅が拡大する可能性は極めて大きい。政界は左右対立が激化するばかり。誰が大統領になっても、人気取りのバラマキが続くでしょうし。
――日本の財政赤字も巨大です。
鈴置:日本は対外資産を豊富に持ちますが韓国はまだ、債権国になり始めたばかり。国の信用が異なります。韓国の場合、下手すると外資が一斉に逃げる事態に陥りかねません。
中央日報が社説でここを突きました。「韓国経済、『双子赤字』の赤信号が灯った」(2月7日、日本語版)です。
「中南米型」との合併症に
・韓国経済では見慣れない「双子赤字」が頭をもたげている。現政権がよどみなく財政を拡大し、その間財政赤字が増えても韓国国民はブレーキをかけることができず見守るしかなかった。
・問題が深刻なのは貿易赤字が同時に現れているという点だ。1月貿易収支は48億9000万ドル(約5638億円)の赤字となり、昨年12月に続き2カ月連続で赤字が続いた。2カ月連続で貿易赤字は世界金融危機を体験した2008年以降14年ぶりに初めてだ。特に、財政赤字が悪化の一途をたどっている中、貿易赤字まで体験する状況は懸念される。
韓国の貿易赤字は原油高が原因で一過性の問題です。輸出も半導体を中心に絶好調。だから、「双子の赤字」というには大げさかな、とも思えます。ただ、韓国人には1997年の通貨危機のトラウマがあって、以下のように心配するのです。
・1997年通貨危機の時も貿易収支赤字が積もっていたが、警戒心がなかったため、結局は国家破産の寸前まで達した。それでも当時、救済を受けた決定的な背景は強固な財政だった。国内総生産(GDP)比国家債務比率は11.4%だった。この比率は今年50%を超えた。
1997年、アジアでは民間部門の対外債務が通貨危機の引き金になりました。一方、1980年代に中南米の国々では政府部門の対外債務が通貨危機を引き起こしました。「アジア型」ばかりを警戒していると、今度は「中南米型」との合併症に陥るぞ、と警告したのです。
年金なども含めた韓国の統合財政収支は2019年から赤字。これから少子高齢化が進んで年金支出が収入よりも多くなれば、財政はますます悪化します。悪い材料ばかりなのです。
我が国は五輪開催国だ!
――それを「政治」は無視する……。
鈴置:政治だけではありません。中央日報が心配するように、国民に「警戒心」がないのです。日本もそうでしたが、バブルの宴に酔っている時に、目と鼻の先に断崖絶壁が待っているとは誰も思わない。
ことに今、韓国人は「大国になった」との絶頂感の中にあって、1997年の通貨危機は「国が小さかったが故の事故」と見なすようになりました。弱小国だった時の不祥事は振り返りたくない、との空気も横溢しています。
大企業だって資金繰りに詰まれば倒産します。国が大きかろうが、危ないと見なしたら市場は通貨売りに出ます。英国だってポンド危機に陥ったのです。
1997年のアジア通貨危機はタイから始まりました。当時、韓国の有力エコノミストらは口をそろえて「東南アジアの国々と、オリンピックを開催した韓国を一緒にしないで欲しい」と言っていました。
ロンドンだってソウルより80年前に近代五輪を開催していたのですが、あまり自信たっぷりに説明されるので、何も言えませんでした。韓国人は時々、へんてこりんな自画像に酔う。これが危険なのです。
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