「聖隷クリストファー落選」に現役指導者からも異議続出…問題だらけの高校野球で問われる“高野連の責任”
まさか、ここまでの大事になるとは思っていなかったというのが関係者の本音ではないだろうか。1月28日に行われた選抜高校野球の選考委員会で昨年秋の東海大会準優勝の聖隷クリストファー(静岡)ではなく、準決勝敗退の大垣日大(岐阜)が選出されたことの余波は依然として収まる様子が見られない。【西尾典文/野球ライター】
【写真】出場選手に責任はないが…選抜高校野球は問題だらけ 「21世紀枠」以外にもある“不可解な選考方法”
署名活動もスタート
2月4日には末松信介文部科学大臣が「必要に応じて学校側に丁寧に親切に説明すべき」と発言。同じ日には大会を主催する毎日新聞が「センバツ出場校の選考について 毎日新聞社からのご説明」という異例の声明文を発表した。さらに、7日には聖隷クリストファー野球部OB会による「聖隷クリストファー高校野球部を33校目の選抜校として甲子園へ」という署名活動もスタートし、1万人近い数の署名数が集まっている(8日時点)。
ただし、今回の選考に関して言うと、決して「ルールの逸脱」があったわけではない。出場校の選考基準第5項にも「本大会はあくまで予選をもたないことを特色とする。従って秋の地区大会は一つの参考資料であって本大会の予選ではない」と明記されており、その他の4項に沿って大垣日大を選んだと言ってしまえば、それまでの話である。
要するに、選抜はあくまでも選考委員によって選ばれたチームが出場する大会なのだ。「予選をもたないことを特色とする」という点には、様々な歴史的背景があることは確かであり、地方大会を勝ち抜いた代表校によって行われる、「夏の全国高校野球選手権」(夏の甲子園)とは違う大会があることの意義は理解できる。
しかしながら、今回の選考に対してはダルビッシュ有(パドレス)、上原浩治氏(元巨人)や青山学院大駅伝部の原晋監督、鈴木大地前スポーツ庁長官なども苦言を呈しており、スポーツに関わってきた多くの人も同様の感想を持ったのではないだろうか。
地域性ではないという説明
筆者は、現役の高校野球指導者7人に今回の選考について話を聞いたが、聖隷クリストファーの落選が妥当だと思うという声は“皆無”だった。
「(智弁和歌山の)高嶋仁前監督も選考会の解説で話をされていましたが、秋の結果を考えれば、誰でも聖隷クリストファーが選ばれると思うでしょう。過去にも、東海大会で1勝もできなかったチーム(2003年の東邦、2008年の宇治山田商)が選ばれたことがありますが、この時とは東海地区の出場枠数が違いますし、準優勝したチームが決勝で大敗していないのに、選ばれないというのはちょっと信じられないですね。しかも理由が(静岡から2校を避ける)地域性ではないという説明となれば、納得はできないと思います」(東海地区のある指導者)
毎日新聞は前述した声明文の最後に「いただいたさまざまなご意見を受け止め、日本高野連とも共有し、今後の大会運営の参考にさせていただきます」と結んでいるが、現在の方法では再び疑問の残る選考が起こることは十分に考えられる。
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