妻の「プラトニックな不倫」に悶々… 45歳「夫」が相手の男性と意を決して面会した結末
夫婦生活を拒み…妻に異変
子どもも生まれ、共働きで忙しい日々が過ぎていった。
「僕らが結婚して1年もたたないうちに、妹が離婚したんです。璃奈と妹は同い年だし、どこか馬が合うのか仲がよかった。妹はちょっと変わったタイプでしたから、『離婚したことだし、人生やり直したい。東京に行くわ』と会社を辞めて上京してきたんですよ。璃奈は喜んでうちに住んでもらうと言い出して。僕は妹とは住みたくなかったし、妹もそう思ったんでしょう。歩いて数分のところのワンルームマンションを借りて住み、毎日のように手伝ってくれました」
近所のスナックでアルバイトをしながら兄夫婦を支えてくれた妹に、夫婦はきちんとバイト代を出していたという。シッターさんを頼んだら大変よ、と璃奈さんに言われて遼太郎さんも渋々応じたそうだ。
上の子が小学校に上がったころ、璃奈さんはほっと一息ついたのか、少し様子がかわっていった。
「部署が変わって忙しくなり、身も心もついていかないと言うようになったんです。それと同時に夜の夫婦生活を拒むことが増えて……。僕は璃奈をずっと女性として好きだったし、『パパ、ママ』とは言わずに名前で呼んでいました。妹に子どものめんどうを見てもらって、月に1度はふたりで食事に行ったりもしていた。子どもたちはいずれ育って独り立ちしていく。残るのは夫婦。子どもに迷惑をかけないためにも、ふたりで元気に仲良くしていこうと常々話し合っていたんです」
だから夜の生活を拒むのは、遼太郎さんに言わせれば「ルール違反」だった。だが身も心もつらいと言われれば無理強いするわけにもいかない。
「それなのに残業が増えていく。オレが会社に文句言ってやろうかと言ったら、やめてよ、子どもじゃないんだからと本気で怒っていました。でも僕にとっては家庭の死活問題だった」
ずっと忙しいわけではない、もう少したったら落ち着くからと璃奈さんは遼太郎さんをなだめた。そして「今だけ、お願い」と別の部屋で寝るようになった。
「なにげなく妹に愚痴ったら、『わかるわー。仕事が忙しいときに夫のいびきで眠れないってよくあるのよ。そもそも夫婦なんて寝室が別のほうがいいのよ』と言われて。そんなものかなあと思いながらも釈然としませんでした」
半年ほどたつと、確かに璃奈さんは仕事が落ち着いたらしく、それまでよりは早く帰ってくるようになった。ただ、ときどきぼんやりしていたり、子どもたちを見ながら目を潤ませたりすることがあった。
「具合が悪いんじゃないかと本気で心配して病院につれていこうとしましたが、断られました。以前と違って心が離れている。どうしたらいいかわからない。でも何かしないと璃奈がいなくなってしまうかもしれない。いてもたってもいられない気持ちになって、『璃奈、最近、変だよ』と言ったこともあります。でも璃奈は『ごめんね。私は大丈夫だから。もうちょっと時間をうまく使うようにいろいろ試してみるから』と。もちろん僕も家事をしていましたが、週末などは時間をかけて璃奈が料理してくれる。その背中を見ながら、こんなに愛しているのに心がひとつになれない虚しさを、僕はどうすることもできませんでした」
ときおり妻の胸ぐらをつかんで、「こんなに愛しているのに……」と叫びたくなることもあった。だが、父親としての矜持、家庭を壊したくないプライドが彼を押しとどめていた。
知りたい気持ちが抑えられず、妻の携帯を…
それでもどうしても我慢できず、彼は「何が起こっているのか知りたい」気持ちに勝てなくなっていく。真実を知りたい、知って前に進みたい。ずっと同じ場所で足踏みをしていることに耐えられなくなった。
「申し訳ないけど、寝ている璃奈の指を使ってスマホのロックを解除しました。すぐに彼女と『まー』という相手とのLINEのやりとりが出てきた。“まー”って誰だろうと思いながら、それでも読むのはやっぱりよくないと躊躇しつつも会話を読みました。つい最近は愛の言葉ばかり。遡っていくと仕事関係の会話が多い。そのころは『○○部長』と呼んでいるので、上司なんでしょう。いつから恋人っぽい会話になったのかと調べると、璃奈が僕と寝室を別にし始めたころでした」
好きだとか愛しているとか直接、愛情を伝える言葉は使われていない。ただ、「月がきれいだ。璃奈の笑顔を思う」とか「私も月を見ています。同じ月を一緒には見られないのね」とか、妙にしっとりしたやりとりが多かった。
「ふたりが会っている証拠、不倫している証拠はいっさいつかめなかった。関係を持っているかどうかはわからない。だけどふたりの間には誰も入れない世界がある。そんな気がしました。それがショックでしたね」
だが携帯を見てしまったことを璃奈さんには、もちろん言えない。ひとり悶々としながら、ある週末、遼太郎さんは璃奈さんの寝室を訪ねた。
「ノックして入っていくと、璃奈はスマホとにらめっこしていました。はっとした顔で僕を見て、少し笑って『どうしたの?』って。『眠れないんだ。一緒に寝たい』というとスマホを置いて『わかった』と。『オレのこと、嫌いになったの?』『ならないわよ』『本当?』と言いながら彼女の携帯をつかみ、部長とのLINEを彼女自身に見せつけました。『こいつは誰なんだよ、部長なんだろ。浮気しているんだな』と矢継ぎ早に言うと、妻はものすごく苦しそうな表情になりました」
それでも遼太郎さんは矛を収めるようなことはしなかった。いつからなんだ、残業といいながらこいつとホテルに行っていたのか、何回やったんだ、オレよりよかったのかと大声を出した。
「お願い、子どもたちが起きちゃうからと言われてハッとしました。妻が静かに泣いているのがわかり、泣きたいのはオレのほうだよと吐き捨てるように言うしかなかった。『部長のことが好きなのか』と尋ねたら、妻は黙っているだけ。『そういうんじゃないのよ』と言う。じゃあ、どういうことなんだよ。『不倫なんてしていません。男女関係はない』と妻はきっぱり言いました。なんだか僕は恐怖で震えながら、『でも好きなのか』とよせばいいのに聞いてしまった。妻は顔を背けましたが、その顔は好きなんだと言っているように思えました」
[2/3ページ]