妻の「プラトニックな不倫」に悶々… 45歳「夫」が相手の男性と意を決して面会した結末

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 パートナーが他の人と恋に落ちたとき、プラトニックだったら許せるのか、あるいはプラトニックだからこそ許せないのか。そんな論争は以前から存在する。映画『恋におちて』(1984年 ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープ主演)で、夫がよその女性と恋に落ちたことを知った妻。「もう終わったんだ、何もなかった」と夫が言うと、その頬を叩いて吐き捨てた。「そのほうが悪いわ」と。

 日本では、たとえ女性の上に乗っているところを見られても「関係をもっている」と認めてはいけないというのが、かつて男性たちの間で言われていた不倫の掟だ。肉体関係がなければ「浮気、不倫」ではないのだから、と。

 された側としては、どちらがよりつらいという問題ではない。関係をもってはいないと言われれば「その分、気持ちが強い」と思うだろうし、関係を認められれば「心身ともにはまっている」と感じるだろう。【亀山早苗/フリーライター】

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「妻が他に好きな男性がいるのではないかと疑念を抱いたのは、結婚して8年たったころでした」

 永田遼太郎さん(45歳・仮名=以下同)は沈んだ声でそう言った。34歳のとき、5歳年下の璃奈さんと結婚した。すぐに子どもにも恵まれ、長男は10歳、長女は7歳になる。

「周りの友人たちはほとんどがもう結婚していました。僕はどうも人間関係がうまくいかず、30歳までに転職を2回もしてしまった。これが最後と32歳のとき3回目の転職をして、ようやく落ち着いたという経緯があるんです。今の会社は、大きくはないけど社長も若いし、社内の人間関係は風通しがいい。仕事上で何を言っても誰かが受け止めてくれる。かつて勤めていたところでは、部下が努力して成し遂げた仕事の手柄をかっさらっていく上司とか、こちらの企画を潰しておいて似たような企画を自分で立ち上げたフリをする先輩などがいて、そのたびにぶつかってケンカして辞めるのを繰り返してきたんです。だから今の会社は僕にとって居心地がいい」

 璃奈さんは取引先企業に勤めていた。何度か仕事でやりとりをするうち、ランチをともにするようになった。

「素敵な女性だなと思っていたけど、僕なんか相手にされるわけないとも感じていた。ただ、彼女はどこか少し寂しげなところがあって、それが気にはなっていました」

 あるときランチが終わって、それぞれ会社に戻ろうとしていると、彼女が突然、「もらった映画のチケットがあるの。明後日で上映が終わってしまうんだけど、行けたら一緒に行かない?」と言い出した。たまたま遼太郎さんが観たいと思っていた映画だったこともあり、すぐに「行く行く」と誘いに乗り、翌日、最終回の上映を一緒に観た。

「映画、最後に感動的なシーンがあって、思わずウルッときました。館内が明るくなったときに彼女を見ると、彼女も目を真っ赤にしていた。ふたりして照れたように笑いましたね。その後、食事に行って映画のことや趣味の話などをしながらゆっくり過ごしたんです。それまではランチしか一緒にしたことがなかったし、いつも半分、仕事の話をしながらだったから、なかなか彼女がどんな人なのかつかめなかった。感じがよくて仕事ができるというイメージだけで」

璃奈さんが育った複雑な家庭

 ところがじっくり話してみると、意外とそそっかしいところもあり、人間味にあふれていた。聞けば東京の下町で育った3代続く江戸っ子だという。

「僕は西日本の小さな町で育っていますから、江戸っ子、かっこいいと単純に思ってしまいました。だけど彼女はさらりと、『でも私には父がいないの』と。『母は愛人だったのよ』というから少しびっくりしたんです。認知はしてもらっていたし、それなりに生活費ももらっていたから経済的に苦労はしていないけど、母がいつも寂しそうだったのが記憶に残っている、と。そのお母さんも彼女が就職した年に亡くなったそうです。どこか寂しげに見えるのはそういうことだったのかと思いました」

 母が亡くなったとき、父から過分な香典が届いたものの、今後いっさい璃奈さんは父親とは関わらないという誓約書を書かされた。万が一、父が亡くなっても遺産相続は放棄すると書面で確認させられた。生前の相続放棄は法律上、特効性はないし、法学部を卒業した璃奈さんはそのことを知っていたが、あえてサインした。

「父は家を母の名義にしてくれていました。もうそれでじゅうぶんだった。母は父に世話になったかもしれないけど、私は自分の人生を父に干渉されたくないと思っていたから、母が亡くなったのを機に縁を切るのもいいと思った」

 それが璃奈さんの言い分だった。この言葉に遼太郎さんは心を動かされたという。何の苦労もなく大人になった自分が恥ずかしかった。

「オレは頼りがいもないし、何がいいところがあるわけじゃないけど、あなたのことが大好きなんだ。つきあってみてもらえないだろうかと言いました。すると彼女、『そんな、お試しみたいに言わないでよ。私だって何にもいいところなんてないんだから』と笑うんです。つくづく一緒にいたいなと思いました」

 1年半ほどつきあっている間に、お互いの気持ちが結婚へと固まっていった。彼女に親族がいないため、結婚パーティという形にし、遼太郎さん側は両親と、5歳違いの妹だけが出席した。

「僕の側だけ親戚なんかが来ちゃうと璃奈が心苦しいだろうと思って。両親もそのあたりはわかってくれて、パーティも最初のうちだけで、妹に連れられて早々に引き上げていきました。妹には、両親においしいものを食べさせてやってとお金を渡しておいた。妹はむしろ喜んでいましたよ。いいホテルに泊まっておいしいものが食べられる、と」

 璃奈さんは遼太郎さんの思いやりに目を潤ませて感謝していたという。誰もが認める「いいカップル」のスタートだった。

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