コロナ第6波の切り札は「国産飲み薬」 塩野義製薬はすでに年内に100万人分を準備

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 全国の新型コロナウイルスの新規感染者が2月3日、初めて10万人を超えた。「第5波」のピーク時の1日当たりの感染者数の3倍以上だ。

 岸田首相は昨年末「十分な医療体制が準備できた」と自信のほどを示していたが、筆者は「お願いベースだけで大丈夫だろうか。第5波の『二の舞』になってしまうのではないか」と懸念していた。昨年の夏、新型コロナの感染者を管理する保健所の業務がパンクし、症状が悪化したのに入院できずに自宅で死亡するケースが相次いだが、大半の診療所は往診に参加しなかったからだ。

 残念ながらその予想が的中してしまったようだ。

 感染力が高いが重症化率は低いとされるオミクロン株については、軽症者が自宅で療養できる体制を整備することが求められているが、新型コロナ患者に対応する診療所の数は思うように伸びていない。2月4日付日本経済新聞は1面トップで「新型コロナへの感染が疑われる人を診察する『発熱外来』に指定される約3万5000の医療機関のうち、約3割が自治体のホームページ上で名前を公表していない」と報じた。感染者数が多い東京都や大阪府では公表が半数程度にとどまっており、このことが一部の発熱外来に患者が集中し、診療や検査が滞る弊害を招いている。

 政府は新型コロナに対応する発熱外来に指定された医療機関に対しては1人当たり3000円の報酬を加算し、施設名を公表すれば2500円を上乗せする措置を講じているが、「報酬加算では現場の医療機関は動かない」という現状は変わっていない。

 日本では非常時に病院に対して医療内容の変更を命令できる法的権限を国や地方自治体は有していない。昨年2月の感染症法改正の際に行政命令の検討がなされたが、医療界の反発が大きく、成立しなかった経緯がある。

基礎疾患と新型コロナの「合わせ技」の危険

 限られた医療資源のままで新型コロナとの闘いが続く日本で「オミクロン株の特徴を踏まえた効果的な対策」が議論されるようになっている。

 病原性が低いとされるオミクロン株だが、全国で重症患者が増加している。重症化リスクがある高齢者などへの感染が増えているからだ。東京都内では入院患者に占める高齢者の比率は50%を超え、第5波の2倍の水準となっている。

 現場の医師は「基礎疾患と新型コロナの『合わせ技』で重症化する」と指摘する。

 世界で最も高齢化が進む日本には、糖尿病患者は約330万人、心不全リスクを持つ患者は約30万人、呼吸器不全の患者は約20万人存在する。

 さらに寝たきりの状態の高齢者が感染して入院すると、食事や排泄などの介助が必要となり、看護師の負担は重くなる。認知症などへの対応も必要になるという。

 世界に冠たる長寿大国日本に必要なオミクロン対策は、基礎疾患を抱えた人や寝たきり状態の高齢者への感染を深刻化させないことがなにより肝心なのだ。

 全国知事会の平井会長は1日「新型コロナ対策の重点を従来の飲食店から学校や保育所に転換する」よう求めた。「学校や保育所で感染した子供から家庭内で同居する高齢者などにオミクロン株を伝染させる経路を断つ」との狙いからだが、「子供の発達に大きなマイナスになる」として教育施設などへの休業要請を反対する意見は少なくない。

 高齢者などへの感染防止のための人流制限対策はコストも伴う。求められているのは高齢者などが感染しても重症化を防止できる対策なのではないだろうか。

 政府は新型コロナのブースター接種を加速化しているが、飲み薬も効果があることから、その確保に力を入れている。

 政府は米メルク社から160万人分の飲み薬の供給を受けることで合意しており、既に25万人分の供給を受けた。だが現場には十分に行き渡っていないようだ。都内で発熱外来を開設する医師は「近隣の薬局に在庫が少ないことから、高齢者に陽性が判明しても元気そうなら処方していない」と語る(2月3日付日本経済新聞)。

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