【袴田事件と世界一の姉】巌さんの縦縞パジャマに付いていた「血」を巡る異様な新聞報道
シミが「血染めのパジャマ」に拡大
そんな中、静岡県警の捜査陣の矛先が巖さんに向くきっかけとなったのがパジャマだった。
事件5日後の7月4日に行われた家宅捜索では従業員宿舎も調べられ、捜査員が巖さんの寝具入れから白地に水色の縦縞の入ったパジャマの上下を見つけた。そこに小さなシミがあったからだ。返り血の跡かもしれないと思えば疑って当然だ。
巖さんは素直に任意提出に応じ、パジャマは静岡県警で鑑定にかけられた。捜査報告書では、「手にとってよく見ると、同パジャマは上衣の右袖の肩に近い部分が鍵型に切れており、左前面のポケット下付近に、血こんか、サビか、しょう油のしみのあとか、判断できないが僅かにそのこん跡が認められた」とされている。その程度の「シミ」だった。
巖さんの血液型はB型だ。被害者の血液型は、橋本専務がA型、妻・ちえこさんがB型、二女・扶示子さんがO型、長男・雅一郎さんがAB型である。B型以外が検出されれば犯行証拠になりうる。
色めき立った県警は早速、所属の研究所で鑑定した。捜査報告書によれば、「血液型は上着の左胸はAB型、ズボンの右膝部分はA型、他の部分は判定不能。この結果により、袴田のパジャマには本人の血液型(B型と推定され、逮捕後確認)以外のもの、即ちA型(藤雄)、AB型(雅一郎)の血液が付着しているのが確認された」とした。
ところが、その後に警察庁の科学警察研究所(科警研)に送ったところ、「上着の左袖口部(背面)、左胸ポケット、ズボンの右膝当部に夫々(それぞれ)人血の付着が認められたが。血液型は不詳」とされた。国の最高峰の研究機関で調べても血液型がわからない程度の「シミ」だったのだ。
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