東大初の捕手でプロ入りなるか “強肩”松岡泰希君は「大学日本代表に入りたい」
セカンド送球タイムは最速1.87秒
昨年は春の法大戦に勝利してリーグ戦での連敗を64でストップし、秋にも立大から勝利するなど、上昇機運が高まっている東大野球部。そんなチームの中でプロのスカウト陣からにわかに注目を集めているのが捕手の松岡泰希(新4年)だ。昨年春から正捕手となると、連敗を止めた法大戦では先制タイムリーを放ち、チームトップとなる5打点をマーク。春秋のリーグ戦を通じてマスクをかぶり続け、攻守にわたってチームを牽引した。【西尾典文/野球ライター】
【写真】プロのスカウト陣から注目を集める東大の捕手・松岡泰希。井手監督は「肩の強さは他の大学にもいないレベル」
松岡の最大の武器は、その強肩だ。アマチュア選手の場合、イニング間のセカンド送球タイムで2.00秒を切れば、強肩と言われるが、昨年春の早大戦で筆者が計測した時には最速で1.87秒をマークしている。しかも、一球だけが速かったわけではなく、他にも1.90秒、1.91秒など、高水準のタイムを連発していたのだ。
ちなみに、1.87秒という数字は、昨年の東京六大学の中で筆者が確認できた中でナンバーワンの数字である。東大以外のチームの正捕手は、いずれも高校時代から評判の選手たちばかり。その中でもトップということはプロのスカウト陣が注目する材料としては十分と言えるだろう。
授業のない日は1日最低10時間
2月上旬、松岡本人に話を聞くことができたが、肩については野球を始めた頃から強く、やはり最も自信を持っている部分だという。
「野球を始めたのは小学校3年生の時ですが、当時から肩は強かったです。(野球漫画の)MAJORの茂野吾郎(主人公)にあこがれていたこともあって、最初は自分から希望して投手をやっていましたが、コントロールが良くなかったので、外野に回りました。当時のチームの伊佐地豪文監督が、社会人野球のヤマハでキャッチャーをやられていた方で、6年生の時に勧められてキャッチャーに転向しました。その後は基本的にずっとキャッチャーです」
中学では中高一貫の東京都市大付属へ進学。高校時代は目立った成績を残していたわけではないが、早慶戦を見に行くことが恒例行事だったことで、徐々に東京六大学で野球をすることを考えるようになった。そして東大への進学を決めたのは高校2年の時だ。
「当時の先生から今の成績なら頑張れば、東大も狙えるから目指してみたらどうかと言われたのがきっかけです。同じ六大学でやるにしても、早慶だと実力的に試合に出るのは難しいし、せっかく狙えるなら東大を勝たせた方がいいんじゃないかと言っていただきました。野球をしていた頃は、それほど勉強する時間があったわけではなくて、本格的にやり始めたのは、部活を引退した夏からですね。授業のない日は1日最低10時間はやると決めてやっていました。完全に浪人覚悟で、受験当日も来年のための下見くらいの気持ちだったので、合格した時は本当にびっくりしました。奇跡が起きたなと思いましたね(笑)」(松岡)
[1/3ページ]