東大前刺傷事件 社会心理学者が読み解く東大理III志望「高2被疑者」の“心の闇”

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「共感」の重要性

 思春期挫折症候群に陥りやすいのは、真面目で繊細な学生だという。また、感受性が強いという傾向もあるそうだ。

「彼らに足りないのは“鈍感力”です。『ドラえもん』を思い出してみてください。ジャイアンは自分が音痴という自覚がなく、友達に無理矢理、歌を聴かせます。音痴は挫折体験になっても不思議はないのですが、彼は鈍感力が高いので挫折に気づきません。そのため落ち込まないのです」(同・碓井教授)

 繊細で真面目な中・高校生は、“挫折の乗り越え”がうまくできないことがある。すると、思春期挫折症候群に陥る可能性は高くなってしまう──。

「思春期挫折症候群を防ぐには、共感が重要だと言われています。例えば、友人の成績が落ちたり、甲子園に出場できなかったりして落ち込んでいるとしましょう。友人を励ましても、説教しても、あまり効果はありません。友人の話に耳を傾け、『それは分かるよ』と理解を示すことが重要なのです」(同・碓井教授)

 少年の通っていた高校は、17日にコメントを出した。そこでは、コロナ禍の影響で《孤立感にさいなまれて自分しか見えていない状況のなかで引き起こされたものと思われます》と指摘した。

少年に残る幼さ

 ネット上では賛否両論だったが、碓井教授は「私は学校側の本音が吐露されていると、好意的に受け止めました」と言う。

「クラスメイトと一緒に学校生活を送ったり、担任教師が毎日接することができるような環境だったら、少年が大量殺人を企てることもなかったのではないか、と思うこともあります」

 だが、少年の「東大理III」という目標には、碓井教授も違和感を覚えるという。

「子供が『ノーベル賞を取りたい』という夢を語るのと似た印象なのです。大人は、ノーベル賞が夢として成立しないことを知っています。研究に打ち込んで成果を挙げることが先であり、そのご褒美としてノーベル賞がもらえるというのが正しい順序です。東大理IIIもそうで、医学部を目指すのが先に来るはずです。この点から、ひょっとすると少年のパーソナリティーには、ある種の幼さがあるのではないかと考えています」

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