三谷史観で北条政子は悪女か聖女か…「鎌倉殿の13人」を盛り上げる3人の女優たち
「小池は前から、うまい女優」と野田社長
ちょっとコワイといえば、政子も同じ。自分のタイプだった頼朝を思いっきり誘惑する一方、晴れて結婚すると、前妻・八重への不快感を露わにする。
政子は対岸から自分たちを見ている八重について、義時にこう言う。
「ずーっといるのね」(第4話)
その時の政子はバレバレのつくり笑いを浮かべていた。まるでカラクリ人形の笑顔のようで不気味だった。
「もし、佐殿(頼朝)とあの女がどうにかなるようなことがあったら、わたし何をするか分かりませんからね」(政子)
「そう言われても……」(義時)
「分かりませんからね!」(政子)
この人も頼朝のことになると義時の言葉が耳に入らない。やっぱり強い女性だ。
頼朝にもズバズバ進言する。第3話。義時、兄の宗時(片岡愛之助、49)、政子を前にして頼朝が「ワシは戦をするつもりはない! なぜ、それが分からぬ!」と声を荒らげると、男性2人は口をつぐんだが、政子は黙らなかった。
「座して死を待つおつもりですか」(政子)
本当に気丈だ。頼朝の没後、鎌倉幕府の実権を握ったのも納得である。
小池も好演中。「これが代表作になる」という声もあるが、「彼女は前からうまい女優ですよ」と強調するのは前所属事務所の会長・野田義治氏(75)。確かに代表作と呼べる作品はWOWOW「5人のジュンコ」(2015年)など既に複数ある。大河も「義経」(2005年)に木曽義仲の愛妾・巴役で既に経験済み。こちらも好評を博した。
小池クラスになると、今回も任された役を期待通りに演じているといったところだろう。三谷作品も映画「記憶にございません!」(2019年)などに出演し、慣れている。
「頭が良く、考えながら演じられる人。だから表現力が豊かなんです。たとえると、仏と般若のどちらも演じられる」(前出・野田義治氏)
政子と日野富子、淀殿は「日本三大悪女」と呼ばれている。さて、三谷史観では悪女か聖女か。小池なら、どちらも演じられる。
一番の食わせ物は宮沢りえのりく?
宮沢が演じる時政の後妻・りくもまた強い。その上、制作発表で三谷氏が語ったところによると、とんだ食わせ物らしい。
「この人が悪知恵をどんどん時政に入れ知恵して、たきつけて、時政はどんどん悪い奴になっていくんです」(三谷氏)
第4話でも悪女の片鱗を見せた。頼朝が挙兵の日を決めるため、りくが用意した竹の棒の神籤を引くと、17日と書かれていた。この日は三島明神の祭り。攻める相手の警備が手薄になり、襲撃には好機だった。
時政は「よく引き当ててくれたなぁ」と感心したが、りくは「あの神籤にはどれも17と書いておきました」と、したり顔。慎重な頼朝が出陣に不向きな日を引いてしまい、挙兵を断念してしまうのを回避しようとした。策略だった。
りくが戦いを望んだ理由は時政に手柄を立てさせるため。もっとも、内助の功というより、時政を出世させ、自分が良い思いをするためだろう。
三谷史観による源平合戦は女性たちの存在抜きにしては始まらなかった。やがて起こるであろう3人の直接対決も見ものだ。
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