「致死率0.006%のデータを活かして」 沖縄県専門家会議座長が提言、緊急事態宣言は不要?

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認知症が進む高齢者も

〈矢野医師はまた、

「2類相当だから、みな過度に怖がっている。5類になれば、精神的にも楽になると思います」

 と加えるが、これに関連して、老年医学が専門の精神科医、和田秀樹氏はこんな話をする。

「2019年にはインフルエンザで、10代が65人も亡くなりましたが、新型コロナは、その年齢で亡くなったのはこれまでに3人。ほぼ老人しか亡くならない病気なのは明らかです。老年医学の専門家からすると、お年寄りはインフルエンザに感染しても亡くなる確率が高く、風邪をこじらせて亡くなる方もいる。統計を見ると、毎年10万人ほどが肺炎で亡くなり、うち1万~2万人は風邪をこじらせ発症していると考えられます。風邪のウイルスはオミクロン株と似て肺炎は滅多に起こしませんが、風邪で上気道炎になって免疫力が落ちると、普通の細菌感染から肺炎に至ることがある。その際も死因は肺炎とされるので、風邪は死なない病気と誤解されています。現実には、普通の風邪でも年間1万人程度亡くなります」

 新型コロナだけが特別で、風邪やインフルエンザは死につながっても放置されるなら、それこそバランスを欠く。

「いま歩けなくなり、認知症が進む高齢者が多い。高齢者はテレビの情報に振り回され、怖がって外に出てくれません。薬も家族が受け取りにくることが増え、“全然外に出ない”“足がかなり弱って”と聞かされます。現在、要介護高齢者は全国に500万人程度いますが、いまの状況が続けば200万人くらい増えかねず、すると介護予算が、年間4兆円も増えることになる。そうした状況を防ぐためにも、早く国が5類にするだけではなく、安全宣言も出さないといけません」(同)〉

「沖縄県のデータを日本全国で活かして」

 早くオミクロン株の本質に合わせた対応に切り替えて、経済を活性化させる方向にシフトすべきです。第5波までのように画一化された対応を、全国に先駆けて、沖縄から変えていく必要があります。今回、私が行った濃厚接触者の定義見直しの提案は、私自身が沖縄県専門家会議の座長として、県全体の医療や経済の状況、保健所職員への負荷など、あらゆる面を考えなければいけない立場から考え抜いた対応策です。

 しかし、感染が拡大しはじめて、まだ1カ月しか経っていないことに驚きます。この間、専門家会議が提案し、知事が了解するというプロセスを重ね、基準の変更が何度もありました。大変な、しかし濃密な時間でした。そういう経験を通して培われた沖縄県のデータを、ぜひ日本全国で活かしていただきたい。先に経験した私たちがこれを発信することで、社会機能は回復し、東京や大阪をはじめ全国の医療機関の状況も改善されていくと思います。

〈未知の変異株と格闘しながら蓄積されたデータほど、重いものはない。〉

藤田次郎(ふじたじろう)
琉球大学大学院教授・沖縄県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議座長。1956年生まれ。岡山大学医学部卒。米ネブラスカ医科大学呼吸器内科留学などを経て、2005年に琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科(第1内科)の教授に就任。15年から琉球大学医学部附属病院長を4年務める。感染症内科、呼吸器内科の専門医として、著書、論文も多数執筆。

週刊新潮 2022年2月10日号掲載

特集「最前線で闘った感染症医が提言 『オミクロンに「緊急事態宣言」は不要』『「濃厚接触者』も廃止すべし」より

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