「致死率0.006%のデータを活かして」 沖縄県専門家会議座長が提言、緊急事態宣言は不要?
「濃厚接触者」の廃止
そして最後の提案は「濃厚接触者(接触者)の廃止」です。データに基づき、効率的な感染対策を行う前提で、この概念を根本的に変えられれば、社会機能は劇的に回復すると思います。
また、オミクロン株は感染力が非常に強い一方、重症化リスクは低いとわかっているので、リスクが高い場所に絞って対策することが大切です。たとえば高齢者施設等での感染対策に注力し、そこでクラスターが起きたら、すぐにレムデシビルを投与できる体制を整える、といったことです。
沖縄県では、第6波はピークアウトしていると思われますが、下がり方は少し緩やかです。原因は高齢者施設でのクラスターだと思われます。感染力が強いオミクロン株は、一度施設に入ってしまうと、感染者が100人単位で発生します。その数字が上乗せされるので、減り方が少し穏やかなのだと考えられます。
ですから、こうした施設等の感染対策を強化し、検査体制を整え、薬を使えるようにする。重要なのはそうしたことです。無症状者がうつすリスクはデルタ株までと変わりませんが、オミクロン株に特徴的な「発症日」に基づく対策と「濃厚接触者」の定義を改めることが両輪となれば、結果的に、新規感染者の急増に伴う保健所の負荷も緩和できるはずです。
「新型コロナ」の冠を外せば
沖縄県における第6波の感染者数は、現在までに3万人ほどで、死者は2人となりました(致死率0.006%)。重症者は5人です。私たちの病院で診ている1人も人工呼吸器を抜管できそうで、感染者数だけでなく重症者数もピークアウトを迎えたと感じます。
いま病棟には少し違和感があります。本来治療すべき肺炎がある患者さんは少なく、糖尿病の方から妊婦さんまで、私たちの専門ではない方が、ウイルスの消えるのを待っているような状態です。ステロイドなど免疫抑制剤を飲んでいる方が多く、ウイルスがなかなか消えないのです。
それに、私たちの病棟の看護師は、感染症や呼吸器、消化器内科が専門で、感染症への対応には慣れていても、糖尿病の方や腎移植をされた方、透析患者、妊婦さんとなると、未経験のことが多く、その意味での負担が大きくなっています。
当院は症状が比較的重い方が多いのですが、ほかの病院は退院を待っているだけの方も多いと思われ、本当に医療が必要な方が入院できないことにもなりかねません。新型コロナウイルス感染症は、高齢者や基礎疾患がある方は基本的に入院することになっていますが、この病気から「新型コロナ」の冠を外し、「インフルエンザ・オミクロン2022」のようなものにしてしまえば退院できる、という方が多いのです。
「オミクロン株はデルタ株までと別の病気」
この状況を考えると、人流抑制より人数制限という、政府分科会の尾身茂会長の提言は、当たっているところも多い。これだけ感染力が強い以上、むやみな自粛より、出かけた先での人数に気をつけ、マスク着用や換気に気をつかうことのほうが大事です。
潜伏期間が平均2.8日で最大でも5日、ウイルス排出のピークが発症から3~6日後のオミクロン株は、前者が1~2日、後者が発症から2~3日後の季節性インフルエンザに近づきました。致死率は、0.1%以下とされるインフルエンザよりも、むしろ低いといえるかもしれません。
こうしたデータを出せたのは、やはり沖縄県が島嶼圏だからだと思います。そこに、同様のデータが福井県からも出ました。潜伏期間が2.8日で全員が5日以内に発症、という数字は沖縄とまったく同じで、味覚障害が生じた例も、沖縄の1%に対し、福井は1.2%とほぼ同じ。沖縄のデータが福井でも再現された意味は大きいと思います。
2県のデータを並べれば、オミクロン株がデルタ株までと別の病気であることが伝わると思う。感染症の性質は、このように科学的に考えなければいけません。
[3/6ページ]