「致死率0.006%のデータを活かして」 沖縄県専門家会議座長が提言、緊急事態宣言は不要?

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 オミクロン株は重症化しにくいといわれる一方、濃厚接触者として隔離される人があふれ、社会機能は麻痺しつつある。緊急事態宣言を求める声も聞こえる。だが、その前になぜ沖縄の先行例を見ないのか。沖縄県専門家会議座長が、いますべきことを緊急提言する。

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〈連日、「過去最高」という枕言葉とともに感染者数が発表されるオミクロン株。学校や幼稚園の休校、休園が激増し、濃厚接触者が多すぎて社会機能が低下し、またぞろ医療逼迫(ひっぱく)が叫ばれている。

 だが、はたして大騒ぎするほどの感染症なのだろうか。その実態は、本土より一足先に感染拡大し、ピークアウトした沖縄県のデータが、なによりも如実に物語る。

 沖縄県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の座長である、琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科の藤田次郎教授の話に、いまこそ耳を傾けるときだろう。〉

 厚生労働省は1月28日、濃厚接触者の待機期間を10日間から7日間に短縮しました。医療や介護、保育など社会機能を支えるエッセンシャルワーカーは、検査で陰性が確認されれば最短6日目で解除されていましたが、こちらも2回の検査で陰性になることを条件に、5日目で解除できることになりました。

 週刊新潮に沖縄のデータを掲載していただいたおかげではないでしょうか。

 14日の待機期間が10日に短縮されたときも、沖縄県では働けずにいる医療従事者が千人から700人に減りました。7日になれば、復帰できる人がさらに増える。ですから、これは適切な措置ではあるのですが、本質的なところにまでは踏み込めていない、という思いもあります。

濃厚接触者を探す必要はない

 いまの課題は、「濃厚接触者」という定義自体に踏み込むこと。すなわち、発症日から2日前に遡って接触者を探すことは、もうやめてもいいのではないか、ということです。

 私も検討委員会に入っている厚労省の「診療の手引き」にも、「感染可能期間は発症2日前から」と、いまなお書かれ、保健所が2日前に接触した人まで探し出さなければならない状況が続いています。2日遡ることは、保健所には業務の圧迫につながる大きな負担になっています。

 そもそも発症2日前まで遡ってきたのは、新型コロナウイルスはデルタ株まで、発症時すなわち熱が出たときがウイルス排出のピークだった、という前提に基づいています。安全を期して、ピークの2日前まで遡ろう、という考え方です。こうした「濃厚接触者」という概念が必要だったために、新型コロナウイルス感染症は、非常にやっかいでした。

 ところが、このたび国立感染症研究所が、沖縄県のデータも含めて英語の論文を発表し、そこにはオミクロン株のウイルス排出のピークは、発症後3~6日と書かれています。それを踏まえれば、ピーク時の2日前でも発症日より後になる。発症前にまで遡って「濃厚接触者」を探す必要は、もうないといえます。

学級閉鎖、学校閉鎖も避けられる

 このように科学に基づいて考え方を変えれば「濃厚接触者」という概念はもう不要です。感染者が発症したとき、マスクを外して一緒に食事するなどしていた人だけが、5日間ほど健康管理をすればよいと思います。そうなると、「7日間待機」の意味も失われ、仕事を休む人もほとんどなくなり、社会の各方面でインフラが回復します。

 現在、保育所や学校などでは、「濃厚接触者」に加えて「接触者」という概念まで使っているそうです。学校などで感染者の近くにいた人を「接触者」として検査などを呼びかけるように、厚労省が都道府県に通知したことから始まっています。しかし、発症日から遡ることをやめれば、濃厚接触者も接触者も不要で、従来の季節性インフルエンザと同じような扱いで済むようになる。そうすれば学級閉鎖や学校閉鎖も避けやすくなるでしょう。

 そうした諸々を考慮すると、今回の待機期間の短縮は前進ではありますが、濃厚接触者の概念自体をなくし、社会を救ってほしかった、という思いがあります。国立感染研の論文に世界が注目しているなか、どうしてそれが日本の感染対策に活かされないのか。不思議な気もしています。

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