患者数400万人「軽度認知障害」過度に恐れるのは… 診断されたらどう過ごせばいい?

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記憶以外の機能はトレーニングで向上

 結論からいえば、予防対策をしたグループとしなかったグループでまったくといっていいほど変わらなかったのは、記憶能力の低下でした。アルツハイマー型認知症の本質的な症状である記憶能力の低下は、いくらトレーニングを重ねて予防したとしても避けられないわけです。

 ただし同時に、記憶以外の、手順を踏んで作業を行う実行機能や処理スピードなどは、トレーニングすることで高められたという結果も出ています。仮に人が認知症になって記憶力が低下しても、他の脳機能が補完し合うことで日常生活は維持できる可能性があるのです。

 臨床の経験上、もの忘れを心配して診察に来る方の半分は正常ですから、心配しすぎてもいけない。かといって自分の頭に違和感を抱えたまま放っておくのもストレスですから、どこかで病院に行くことを決断していただくことにはなります。心配な状態が続くなら診察にいらして下さればとは思いますが、その場合は「MCI=プレ認知症」と過度に恐れるのではなく、自らの生活習慣を改めるきっかけとして利用するというくらいの認識で来ていただければと思います。

繁田雅弘(しげたまさひろ)
東京慈恵会医科大学教授・日本認知症ケア学会理事長。1983年、東京慈恵会医科大学卒業。スウェーデン・カロリンスカ研究所老年病学教室の客員研究員、首都大学東京(現・東京都立大学)健康福祉学部長などを経て現職に。認知症専門医であり、2018年度から日本認知症ケア学会理事長を務めている。著書に『認知症の精神療法』があり、昨年、『家族のための認知症ケア』を監修。

週刊新潮 2022年2月3日号掲載

特集「それは『認知症』の始まりなのか…患者数400万人 『軽度認知障害』の正しい恐れ方」より

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