焼津「カツオ窃盗事件」は“第二幕”へ 「窃盗犯」を処分なしで勤務させ続ける漁協の呆れた隠蔽体質
釈放後、漁協に戻った職員
ともにカメラを見ていた漁協職員も「これはやっているな」と言っていたという。「他人事のような態度だった」と所長は振り返る。「あの時は、まさか漁協職員がこんなにも深く関与しているとは思わなかった」。ちなみに、その場には逮捕された職員のAもいた。それから、所長らは漁協幹部らと一緒に、焼津警察署へ被害相談するために向かった。実はちょうど、その少し前に第一ルートの被害者である船会社も窃盗被害に気づき、水面下で動いていた。時同じくして静岡県警に焼津漁港がらみの二つの窃盗事件が持ち込まれたのだった。
そして、昨年10月、第一ルートの事件から着手され、事件は全国区のニュースとなったのである。当然、漁協は世間に対し平謝りとなった。Aらの逮捕を受けて、すぐさま調査委員会を発足。11月末に報告書を発表した。その際、関係者の処分も発表されたと誰もが思うであろう。だが、所長はにわかには信じがたいことを言うのである。
「逮捕・起訴されたA以外は、今も何食わぬ顔をして漁協に勤務し続けています。Bという職員とCという元職員もともに逮捕されましたが、処分保留で釈放されました。問題はBです。彼はまた漁協に戻って勤務しています」
先の警察関係者によれば、決して嫌疑がなかったわけではないという。
「BとCは取り調べに、窃盗に関与し、報酬を受け取っていたと認めています。不起訴といっても起訴猶予、つまり犯罪の成立は認めたうえで悪質性などを考慮して起訴を見送る判断だったと思われます」
調査報告書でも認められている過去の窃盗
漁協がまとめた調査報告書においても、BとCの関与を認定している。
〈職員Aがセリを担当し、KS社(カネシン)が買い付けをした場合、未計量のパレットを一缶搬出できるよう職員Aが担当の帳面係に指示をして便宜を図った(中略)KS社から報酬を受けた職員Aが、担当の帳面係に対し、直接1〜2万円の報酬を渡していた〉
この帳面係こそがBとC。仮に関与の度合いが低かったとしても、世間の常識に照らせば対外的にも、謹慎処分にするなど、なんらかの措置を講じるべきであろう。だが、問題はAやBに限った話ではないのだ。すでに世間に明かされているように、この窃盗は過去数十年にわたって、セリ部門の担当者の間で行われてきた。つまり、過去に遡れば、関与している漁協職員はいまも少なからずいるのである。
調査報告書もそれを認めている。2008年頃から10年頃までのおよそ3年間にわたり、当時の係長(退職済み)の指示を受けて、外港売り場に勤務する職員が、外港冷蔵庫に在籍していた二人の職員と共謀し、未計量のパレットを係長の親族が経営する冷蔵庫に搬送していたと明記している。「頻度は最低2カ月に1回、1回あたりの数量は1〜3缶」。親族から報酬を受け取った係長は、売り場に勤務する職員に「1ヶ月に5〜10万円程度」、冷蔵庫に勤務する二人の職員には「2ヶ月に2万円程度」、報酬として分配していたと書かれている。退職者を除くと少なくとも二人の現役職員が窃盗に関与し、報酬を得ていたとある。
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