【サウジ戦】スタメンは中国戦と全く同じでも試合内容は全く違った理由

スポーツ

  • ブックマーク

意地を見せた長友

 一方、後半43分の中山のプレーである。左サイドでパスを受けた時に、左前方には浅野拓磨が、自身の後方には田中碧がサポートに入っていた。しかし中山は浅野へパスを出すタイミングを逃したためパスコースを消され、3人の選手に囲まれた。しかたなくドリブルで運びつつコースがないと判断すると田中へバックパス。しかしこれが弱く、相手にカットされた。

 中国戦では伊東のゴールをアシストして評価を高めた中山だったが、サウジアラビア戦は不用意に飛び込んで簡単に抜かれるなどミスが目立った。中国戦と違い強度の高い試合のため、なかなか入りにくかったのかもしれないが、修正力を高めないと長友からポジションを奪うことはできないだろう。

 その長友だが、伊東のゴールをアシストしたのは偶然と本人も認めていたものの、前半13分にクロスはブロックされたが、倒れながらも身体を張ってマイボールにするなど“意地”は見せた。

 彼のファイトする姿勢はチームメイトにも伝わったことだろう。南野が自陣左サイドの深くまで戻って守備に参加したり、前半42分にはアルブリカンのドリブル突破によるカウンターを、手で倒してストップしたりするなど“泥臭い”プレーを厭わなかったからだ。プレーでストップできないなら、反則で止めるのもチームプレーと言っていいだろう。

オーストラリア戦に期待

 こうして中国戦では批判された長友と南野の2人であるが、サウジアラビア戦では批判を跳ね返すプレーを見せた。そしてMVPは2試合続けて2ゴールに絡んだ伊東ということで異論はないだろう。2点目のように、乗っている選手にはボールもこぼれてくるようだ。

 そして日本の快勝に貢献した選手として、守田英正と田中、遠藤の3人の名前をあげたい。特に守田と田中は90分を通じて頻繁なポジションチェンジで日本の攻撃陣をリードしつつ、守備でもサイドバックのカバーリングと攻守のつなぎ役としてフル稼働した。このトリプル・ボランチは、いまや日本のストロングポイントと言っても過言ではない。

 そして海外からは、セルティックの旗手怜央がレンジャーズとのダービーマッチで2ゴール1アシストの活躍が報じられた。今回はケガで招集を見送られたが、ドリブラー三笘薫など、フロンターレOBの躍進は目を見張るものがある。アウェーとはいえオーストラリア戦も好勝負が期待できそうだ。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。