北京五輪 ピークを過ぎた小平奈緒の戦い方に注目 人生そのものが見える5人の日本人選手

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知性と感性を感じる

 4年前、平昌五輪で私が最も活躍を楽しみにしていた選手のひとりが、モーグル(フリースタイルスキー)の堀島行真だった。当時20歳。大学3年の堀島は五輪前年の2017世界選手権で、シングルとデュアルの2種目とも制し、世界王者になっている。そればかりでなく、テレビのインタビューで見た堀島の発言は、それまで私が出会ったアスリートの誰とも違う、知性と感性の両方を感じさせる魅力的なものだった。

 アスリートが自分の技術や心情を詳細に言語化するのは難しいと言われる。堀島は頭でっかちの理屈でなく、アスリートならではの体感的な事実を自然体で語っていた。このようなタイプのアスリートが結果を出して注目されたら、スポーツの社会的評価が高まるのではないか。もっと明快にスポーツ文化の素晴らしさが共有されるのではないか。私はひそかにそんな期待をふくらませたのだ。

 しかし、勝負は残酷だった。堀島は11位、表彰台には遠く及ばなかった。しかも、大会前は評価の高くなかった原大智が見事に銅メダルを獲得した。フリースタイルスキー史上初の快挙。明暗が鮮やかに分かれる結果に堀島は打ちのめされただろう。

9戦すべて表彰台

 脚光を浴びた原は、周囲が驚く道を選択する。競輪選手への転身だ。銅メダルに輝いた原は、将来の職業として競輪を選び、平昌五輪翌年の19年4月、日本競輪学校(現・日本競輪選手養成所)の生徒特別選抜試験に合格、秋には卒業してデビューを果たした。

 堀島は、平昌の悔しさと向き合い、モーグルを続けながらもずっと自分を改革する闘いを重ねてきた。今季のW杯では、9戦すべてで表彰台に乗り、うち3戦で優勝した。通算勝利も11勝に伸ばし、雪辱の準備はできている。その堀島の前に立ちはだかるのは絶対王者と呼ばれるミカエル・キングズベリー(カナダ)だ。今季W杯6勝。通算71勝。今季のW杯優勝をふたりで独占しているキングズベリーと堀島の対決が世界のファンから注目を集めている。

 そして、原大智も競輪を一時休み、今大会の出場権を得た。4年の月日をそれぞれの歩み方をした堀島と原がどんな戦いを見せるのか。結果だけでなく、彼らの心の中に起こるドラマと、さらにその後の人生の展開が楽しみだ。

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