風俗勤務がやめられない「有名国立大」のエリート研究員 四十路を越え、振り返る半生
「子供は欲しかったかな」
キャストの勤務は月に1度だから、これまでの彼女の仕事ぶりからすれば、かなり落ち着いた性生活といえるだろう。
「うまく説明できないのですが、例の“東京のお父さん”の作家の方が亡くなったことがひとつの区切りになったのかもしれません。やっと自立できたといいますか。ちなみに本当のパパは存命です。実家にいます。私のこと、処女だと思ってるかもしれませんね」
と由紀子は笑う。いまはやりがいのある仕事につき、彼氏もいる(不倫関係だが)。充実していそうだ。一方、いわゆる「女性の幸せ」を求めたい気持ちはないのだろうか。
「父親の勧めでお見合いも2回しましたが、先方から断られて。それで親も諦めてくれたようですね。本当は家を継いで欲しかったようですけれど。寂しいと思ったことはないですね。飲むのが好きで飲み歩いたりして。知り合いも友達も多い方だと思います。今から結婚しても、相手も同い年位でしょう。向こうの親の介護をさせられるだけだから、ぜったいに嫌。子供は欲しかったかな、って思う時はありますが」
世間から見れば彼女は、凡人にはできない努力をし、それが報われた珍しい成功例といえるだろう。だが話を聞いた限り、彼女に「満たされた」感はなく、それがもうひとつの仕事に駆り立てているのかもしれない。その渇望感は母の死からくるものなのか、父の溺愛なのか、例の作家との出会いゆえのものなのか……。3時間程度のインタビューでははっきりとは見えてこなかった。
知人の主催しているパーティーは公然わいせつ罪にもなりうる類のものだ。バレたら、学校はクビになるんじゃないですか。ヘタをすれば週刊誌も食いつくようなネタですよ、と最後に告げると、
「まあそうかもしれませんね」
とつぶやくのみだった。
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