ドバイ万博祝賀行事中止の衝撃 日本で見落とされている中東リスクとは

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 日本は新型コロナの第6波の真っ只中にいる。新規感染者数が連日のように過去最高を更新する状況下で、メディアが伝えるニュースは再びコロナ一色となっている。コロナ以外の海外の動きでは、ウクライナを巡るロシアと欧米諸国の対立激化や北朝鮮のミサイル発射、さらには中国と台湾を巡る緊張などだ。

「リスクの種はこれだけで十分」との声が聞こえてきそうだが、「日本人にとって最も警戒すべき要因が見逃されているのではないか」と筆者は危惧している。

 日本では報じられていないが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されている万国博覧会(万博)の事務局は1月25日に「同月26日と30日に予定されていた万博の祝賀行事を予想外の状況が発生したことから延期する」と異例の発表を行った。「新しい日程はまだ決まっていない」という。

 事務局は「予想外の状況」について詳しく説明していないが、イエメンの親イラン反政府武装組織フーシ派(以下、フーシ派)による攻撃の危険性を指していると思われる。フーシ派がその直前に「ドバイ万博への攻撃」に言及しているからだ。

 1月17日、UAEの首都アブダビで国営石油会社(ADNOC)への無人機(ドローン)や弾道ミサイルによる攻撃で9人が死傷した。ドバイ空港も攻撃対象だった。

 同24日には米軍の戦闘機と約2000人の部隊を擁するアル・ダフラ空軍基地などに2発の弾道ミサイルが発射され、UAEと米国の防衛システムによって撃墜されるという事案も発生している。いずれもフーシ派が犯行声明を出している。

 フーシ派がUAEに対して弾道ミサイルやドローン攻撃をおこなったことを踏まえ、米国務省は1月26日、米国民に対してUAEへの渡航を再検討するよう求めた。UAEの安全度についても「最も高い危険度にある」との判断を下した。

 米国の対応についてUAEは、弾道ミサイルやドローンの脅威に直面していることは認めたものの、「同盟国と協力しつつ、世界最高レベルの対ミサイル防衛網を構築している」として自国の安全性を改めて強調した。

 UAEが17日の攻撃の報復として、フーシ派が支配する地域に対する空爆を繰り返し実施していることに腹を立てたフーシ派は1月25日「UAEの戦略的地域を攻撃する」とした上で、ドバイ万博会場についても「このような状況では性格が変わってしまった」として攻撃の対象に追加する可能性を示唆した。

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