「借金が300万円あった」 「笑点」デビュー・桂宮治が明かす貧乏時代と妻への感謝

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「収入は交通費とカップラーメン代くらい」

 2008年に入門後、前座時代はほぼ収入がありません。朝から晩まで働いて、収入は往復交通費とカップラーメン代くらい。本当は前座で子どもをつくってはいけないという不文律があるんですけど、かみさんが35歳になっちゃうというので師匠に許可をもらって、長女が生まれました。朝、寄席に行き、夜帰ってくると子育てを替わり、かみさんが銀座の仕事に行く。0歳児だから、ミルク作ってゲップさせて、風呂入れて、寝かせて。ずっと泣いているから死んじゃうんじゃないかとヒヤヒヤしていました。かみさんは家にいないから夜の23時とかにベビーカーに乗せて住んでいた戸越銀座商店街を散歩するんですよ。すると泣き止む。夜な夜な歩いて帰るとまた泣く。大変だったのかなあ。忘れてしまいました。

 金がなくて、出産して1カ月くらいでもうかみさんは店に復帰しました。酒は飲まないけど、寝る暇もなく、さすがに体調を崩してしまい、半年ほどで夜の仕事は辞めて貯金を取り崩して生活していました。

優勝して夫婦で号泣

 12年に二ツ目に昇進すると、たまたまその年のNHK新人演芸大賞をとってしまった。こんなに早くとれると思っていなくて、その夜、渋谷のNHKスタジオから渋谷駅までの道すがら、かみさんに電話したんです。「どうだった?」と聞かれて「だめだった」「そうだよね、ご飯用意しているから早く帰っておいで」「うそ、優勝しちゃった」、と言って、二人で号泣しました。いまの自分があるのはかみさんと師匠のおかげです。貧乏でしたけど、その頃が一番楽しくて、糧になっているんですよね。

 いまでは子どもも3人に増えました。昨年、真打に昇進して、笑点にまで出させてもらえることになって、重圧とプレッシャーしかありません。国民に愛される番組のレギュラーの一員として、視聴者の方に少しでも笑顔になってもらえるよう一生懸命頑張るだけです。

週刊新潮 2022年2月3日号掲載

ワイド特集「絶対零度の人間ドラマ」より

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