北京五輪に橋本聖子氏出席の重要な意味…対韓・対中外交は岸田と安倍の違いを図るリトマス試験紙

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 政府は1月28日、佐渡島の金山遺跡をユネスコの世界文化遺産に推薦することを決めた。ここに至るまでの自民党内部のドタバタは図らずも、岸田総理にとって今後の火種、すなわち自民党最大派閥を率いる安倍元総理との小さいが深刻な亀裂を明らかにするものとなった。【武田一顕/ジャーナリスト】

 金山遺跡の推薦については、朝鮮半島出身者の強制労働が行われていたなどと韓国が横槍を入れ、政府内で一時推薦見送りが決まった。ところが、安倍ら自民党右派=保守層の反発にあい、岸田は一転して推薦へと舵を切った。1月20日の派閥総会で、「論戦を避ける形で登録を申請しないのは間違っている」と巻き返しを主導した安倍は、「良い判断だったんじゃない」(安倍周辺)と今回の結果に満足している。そしてこれは、北京冬季オリンピックとも無関係ではない。

 今週2月4日に開幕する北京オリンピックの開会式に、日本からは東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長、日本パラリンピック委員会の森和之会長の3人が出席する。随分と手厚い対応だ。昨年開かれた東京オリンピックの開会式に中国政府が派遣したのは、国家体育総局の苟仲文(こう・ちゅうぶん)局長。メディアでは閣僚級と称されるが、実態は中国共産党トップ7の常務委員はおろか、25人いる政治局委員にも入っていない。また、体育総局の「局」というのは、外務省や防衛省に当たる外交部や国防部といった「部」よりも格下。苟は日本で言うなら、省庁の次官より少し下のレベルと位置づけるべきだろう。外交では相互主義と言って、相手の対応と自国の対応をできる限り同等にするのが大原則だ。中国の対応に倣えば、今回派遣するのは政府からであれば次官、民間からであれば山下JOC会長が出席するだけでも十分な対応だった。ましてや橋本聖子は、政権与党の現職国会議員かつ元大臣。中国の塩対応に対して、岸田の返礼は糖蜜のようで、日中関係の改善を模索しているのは明らかだ。

 一方、安倍元総理は昨年12月、台湾のシンクタンクが主催する講演会にオンラインで出席し、「台湾有事は日本有事」と話して中国を激怒させた。中国外務省のスポークスマンは「一線を越えようとする者は、誰であっても必ず頭を割られて血を流すことになる」とまで激しい言葉を浴びせた。安倍にとってみれば、中国の批判が激しいほどしてやったりだ。

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