3度の「結婚、不倫、離婚」で今は独身… 48歳男性を惑わす“サイショウドウキョ”の家庭環境
不倫をすると離婚して、不倫相手と結婚しなければと律儀に考える男性が世の中にはいる。そうやって何度も結婚してスッカラカンになったケースもある。それでも、常に全力で人を愛して崩壊と再生を繰り返す人には共感できるものだ。
ところが自ら連絡をくれた太田直樹さん(48歳・仮名=以下同)の場合は、情と依存がどこかアンバランスに混在している感じが否めなかった。【亀山早苗/フリーライター】
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直樹さんは180センチ近い長身、かつてサッカーをやっていたというだけあって、今も細身ながら筋肉質の体型。週に3度はジョギング、週末はフットサルをしているという。
「結婚歴は3回。離婚歴も3回です」
淡々とそう言った。現在は独身で、職場から自転車で15分の古いワンルームマンションに住んでいるそうだ。
最初の結婚は25歳のとき。大学時代からつきあっていた同い年の女性と、つきあって6年になるのを機に結婚した。
「彼女はまだ結婚したくないと言っていたんですよ。もっと職場で自分の居場所を作ってから結婚したいと。僕はこんなに長くつきあったのだから、結婚するのが男の責任だと思っていました。それで言い争いになったとき、『結婚しないというなら、今すぐ別れる』と宣言したんです。そうしたら彼女が、『わかった。私には直樹以外、考えられないから結婚する』と」
ところが、彼女はやはり仕事も諦めきれなかったのだろう。結婚すると、それまで以上に仕事に打ち込むようになった。あとからわかったのだが、当時の彼女は彼に黙ってピルを服用していたという。結婚はしても出産はまだ早い、子供をもつのはもっと後と決めていたのだろう。
「週末も仕事だと出かけていくんですよ。彼女はイベント関係の仕事をしていたから、週末忙しいのはわかるんだけど、新婚なのに僕はひとりきり。スポーツジムに行ったり学生時代の仲間とサッカーをしたりしても、どこか満たされなかった」
3年ほどたったころ、以前アルバイトとして職場で働いていた真菜さんと街中でばったり再会。それを機に食事に行くようになり、あっけなく関係をもった。
「女性と会うようになったら関係をもつのが当たり前だと思っていたから。結婚しているかどうかは問題じゃない。少なくとも当時はそう思っていました」
結婚していながら他の女性とつきあうことに、まったく悪気がなかったというのだ。だが彼は、その価値観がおかしいとわかってもいた。
直樹さんが育った特殊な家庭
「理由はわかっているんです。実は僕が育った家庭がちょっと変わっていまして」
直樹さんは言いよどむ。少したってから顔を上げてまっすぐこちらを見た。
「うち、父と母と愛人が同居していたんです。同じ敷地の離れには父方の祖母もいました。毎日、夕飯は5人で一緒に食べていました。小さいころは、愛人は父の妹だと吹き込まれていた。でも小学校の中学年くらいになると、周りが『おまえんち、サイショウドウキョっていうんだって』と言うようになった。もちろん当時は『妻妾同居』なんてわからなかったから、母に尋ねると母は黙ってしまう。おばちゃんと呼んでいた“父の妹”に聞くと大笑いされました。父に言ったらひっぱたかれそうだからやめたけど。そうやっていつの間にか、おばちゃんは父の愛人だということが自然とわかっていった」
家の中はごく普通の雰囲気だったし、特に誰かがイライラしているわけでもなかった。祖母は畑を耕し、母は祖母を助けながら働きに出ていた。“おばちゃん”はスナックを経営しており、父は先祖から受け継いだ土地を守ったり売ったりしながら暮らしを立てていたらしい。
「僕は小学生のころ、一階で母と寝て、父とおばちゃんは二階で寝ていました。ときおり、夜中に妙な声で目を覚ますと、父が母の布団に入っていった。中学生になると別室を与えられましたが、それでも父と母の夜の声が響いていた。二階からもおばちゃんの嬌声が聞こえることがありました。女ふたりはいがみあっているようには見えなかったけど、仲がいいわけでもなかった。ただ、僕はそれぞれの女性から、それなりに愛されてはいたと思います。むしろ、すぐに怒る父が苦手でしたね。中学2年のころ、おばちゃんからキスされてびっくりしたことはありました。おばちゃんはそれを面白おかしく父に話したんですよ。単に冗談のつもりだったんでしょう。でも酔っていた父は激怒して、いきなりぶっ飛ばされました。理不尽すぎると思った。だけどそれが僕のいる場所なんだと思うしかなかった」
高校は自ら望んで遠方の全寮制に進学した。そこでは同性を愛する同級生に迫られたこともあったという。ただ、直樹さんは何があっても驚かなかった。
「育った家庭から離れてみて、あそこは確かに“普通”ではなかったけど、善し悪しは別として、母もおばちゃんも父から離れられなかったんでしょうね。3人が幸せかどうかは僕が考えることじゃない。そんなふうに結論づけました。僕の愛情がどこか歪んでいるとしたら、やはりあの家庭に問題があったんだと思います」
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