新劇の老舗「劇団民藝」が24歳の“研究生”を主役に大抜擢 「空を飛んでいるような気持ちに」
創立72年を迎える新劇の老舗「劇団民藝」が発表した、異例のキャスティングが話題を呼んでいる。
2月3日に新宿・紀伊國屋サザンシアターで初日を迎える「レストラン『ドイツ亭』」で、主役を演じるのは新人女優の加來梨夏子(かくりかこ)(24)。初舞台で初主演とは極めて珍しい大抜擢だが、ほぼ無名にもかかわらず、大役を射止めたシンデレラガールは何を思うか。
「去年の11月、劇団の食堂に2月公演のキャスト表が掲示されたんです。私は新人発表会に向けた稽古を終えたばかりで掲示を目にしても通り過ぎていました。すると、先輩に“あなたの名前が出ているよ”と教えられたんです。すぐに見に行ったら、一番前に私の名前が載っていて。すぐには信じられず、何だか空を飛んでいるような気持ちになりましたよ」
劇団民藝は昭和25年の創立で、同じく新劇を担う文学座や俳優座と並ぶ「三大劇団」の一つ。かつては滝沢修、宇野重吉、北林谷栄といった名優たちが在籍し、現在は創立メンバーの一人で女優の奈良岡朋子(92)が代表を務める。
「母や友人たちも喜んでくれて、少しずつ実感が湧いてきました。最初は嬉しかったんですけど徐々に“私にできるのかな”って不安の方が大きくなって……」
それだけに本稽古がスタートする1週間ほど前から、加來を「目に力がある」と抜擢した演出家と1対1の自主稽古に取り組んだ。
「細かい指導を頂く中で“緊張するな。あんたはまだ演技は下手。みんなが支えるから飛び込みなさい”と、叱咤激励して頂きました」
[1/2ページ]