都の新型コロナ「無料PCR」に不満を募らせる検査事業者「承認まで時間がかかり過ぎ」
委託を受けているのでわからない
当初、無症状の都民に対しての無料検査実施期間は1月31日までとされていたため、A社は「これは間に合わない」と思ったという。
「その後、7日に事務局から書類の修正を求められ、その日のうちに再申請しました。その返事が来たのは1週間後の14日のことです。さらに追加資料の提出、書類の修正を求められました。1つ直せば、次の日にはまた違う箇所の修正依頼が来る。17日までに4回も再申請しました。修正があるならば、何度も修正を繰り返すのは時間の無駄なのでまとめて伝えてほしいし、あらかじめ追加の必要書類などはないかどうか確かめたいと伝えると、事務局でも書類の審査を行っているはずなのに委託を受けているのでわからない、東京都に確認すると言ったまま連絡が途絶えてしまった。何度も連絡し、必ずお電話ください、と伝えてようやく連絡をもらっても要領を得ず、また他の箇所の修正を求められます。25日になって、初めて都の福祉保健局感染症対策本部の担当者から連絡がありました。しかし、また書類の訂正を求められました」(A社の広報担当者)
申請書類に不備があれば、訂正を求められるのは当然のことである。だが、「可能な限り会場を増やしたい」と言う一方、承認までこれだけ時間がかかっているようでは話にならない。さらに事業者の選定にも不明な点があった。
「知り合いの同業者にも承認されたのかどうか聞いてみたのですが、やはり書類の訂正ばかりを求められて、一向に進まないと話していました。都のホームページを確認しても、追加承認されるのはクリニックや薬局が主体で、民間のPCR検査センターは増えていません。これだけ民間の検査会社の承認には時間がかかっているのに、なぜ木下グループ、J-VPD、MSJ、ピカパカ、ウェルシア薬局などはすぐに承認されたのでしょうか。以前、木下グループのURLだけが都のホームページに掲載されていました。このことからも、特定の業者を優先的に案内していたと言われても仕方がないと思います」(A社の広報担当者)
年末の特殊な事情で
こうした疑問に対して、都のPCR等検査無料化事業事務局に取材を申し込んだ。なかなか進まない審査の状況について聞くと、「審査のフローに沿って進めてはいますが、おっしゃるように修正点はまとめて一度に指摘した方が効率的だと私も思いますが……」と話しつつ、正式な回答は改めて行うと言う。
後日、東京都福祉保健局感染症対策本部の担当者から「申請したものの承認されるまでに時間がかかるという声は、多くの事業者からいただいています」と回答があった。
「言い訳がましくなってしまうのですが、11月下旬に無料検査を行うことが決定し、準備期間が短いうえに、新しい事業ゆえに不慣れな点も多く、お叱りをちょうだいしています。現在は審査体制を強化し、迅速に対応できるよう努めています。
無料検査は当初、木下グループ、ウェルシアなど180ヵ所で始めましたが、12月17日に事業者募集を広報した後、申請していただいた事業者から順次、審査、承認を行った結果ですので、事前に打診や選定をしているということでは決してありません。
木下グループのURLを掲載したのは、年末の特殊な事情がありました。もともと総理の発言を受けて予約なしで検査を始めたのですが、帰省のために検査を受けたいという方が殺到し、検査場に大行列ができてしまいました。行列が原因で感染拡大となれば本末転倒です。やむを得ず木下グループでは予約制を導入しましたが、予約なしで検査ができると思っている方に誤った情報を与えないよう、都として周知したいと同社のURLを記載しました。現在は他にも予約制をとっている事業者もあり、削除しています。あくまで予約が必要だというアナウンスで、利益誘導や特定の事業者へ配慮したということではありません」
検査場はこれからも順次拡大していく予定だという。かつてない感染拡大で、今もまた予約なしの検査場には大行列ができている。突貫の事業とはいえ、東京都にはしっかりとした対応をしてもらいたい。
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