【カムカムエヴリバディ】なぜ登場人物の多くが「ナレ死」を遂げるのか

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 見せ場が続くNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」が第14週に入った。完結するのは第23週なので、既に折り返し地点を過ぎている。藤本有紀さん(54)が書いている複雑なジグソーパズルのような脚本の全体像もおぼろげに見えてきた。

 この物語の特徴の1つは登場人物の多くが「ナレ死」を遂げること。それ以外の死の大部分も登場人物の口から語られるだけ。葬儀の場面は1度もない。恬淡と描かれる死。その理由はもちろんあるはずだ。

 安子(上白石萌音、24)の祖父・杵太郎(大和田伸也、74)はナレ死だった。義父・雉真千吉(段田安則、65)、義母・美都里(YOU、57)もそう。母・橘小しず(西田尚美、51)、祖母・ひさ(鷲尾真知子、72)の死は父・金太(甲本雅裕、56)の口から語られたに過ぎない。

 安子の夫・稔(松村北斗、26)の場合、第20話で戦死を知らせる手紙が届いただけ。死の状況を伝える戦友らは登場せず、絶命した場所すら分からなかった。戦争を描くほかのドラマと様相が異なった。

 るい(深津絵里、49)の夫でジョーこと大月錠一郎(オダギリジョー、45)の恩人・柳沢定一(世良公則、66)の死も同じ。物語のキーパーソンの1人にもかかわらず、その他界は第56話でジョーが語っただけだった。

 徹底している。なぜ、死が描かれないのか。もちろん、藤本有紀さんの意図に違いない。

 それは藤本さんが、「個人の死」より「血と命のリレー」を浮き彫りにしようとしているからだろう。

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