橋下徹「テレビ大量露出」のウラにある巧妙な戦略とは 政治的中立性を巡り毎日放送が調査
維新色を強める橋下氏
大阪市は文書で次のように回答した。
「短期間で約58,000Lもの消毒液の調達と災害時避難所約800箇所への配送を行う必要があったことから、(中略)複数の製造業者・卸業者に契約履行の可否について聴取したところ、履行可能の回答があったのがサラヤ(株)のみであったことから、物品買入等契約業者資格審査委員会の審議を経たうえで、サラヤ(株)と特名(ママ)随意契約を締結したものです」
契約内容には消毒液の「調達」だけではなく、避難所への「配送」も含まれていたのである。
「調達だけなら全国の製造業者が対応できたものの、『配送』という余計な契約条件を付すことで実質的にはサラヤしか参入できない環境を作り出したのでしょう。特命随意契約は業者の“言い値”の世界。調達と配送をそれぞれ競争入札にした方が“税金カット”に繋がったのは間違いありません」(先の市政関係者)
早稲田大学非常勤講師の田島泰彦氏はこう危惧する。
「橋下さんや吉村さん、松井さんがテレビに出るのが日常的な光景になりすぎていて、批判するという精神が麻痺してしまっているのでしょうか。この三人が揃って出演するなど、あまりに露骨すぎで、明らかに中立性を欠いています」
中立の立場であるべきコメンテーターとして活躍する一方、“維新色”を強めていることについて橋下氏本人はどう考えているのか。取材を申し込んだところ、A4判3枚にわたる長大な回答文が寄せられた。橋下氏が長々と「弁明」すること自体異例だが、その理由については、
〈今回はきちんとお答えしなければならない質問だと思い回答しました〉
本誌への逆質問
回答文には、本誌(「週刊新潮」)への“逆質問”も含まれていた。以下、可能な限りそれにも答えながら橋下氏の「弁明」をご紹介しよう。
〈放送法を歪めるかたちで出演することは日本のためにもなりませんし、僕の本意でもありませんので、もし僕の出演やコメントで政治的公平性を害する部分があるというのでありましたら、具体的に指摘していただけると幸いです〉
と、橋下氏は書いているが、冒頭で取り上げたMBSの番組が「政治的公平性を害」しているのは明らかであろう。橋下氏はこの番組について、
〈それぞれの人間性にクローズアップした企画〉
だったと言う。しかし、そんな内容の番組ではなかったことはご本人が一番理解しているはず。都構想を切望するような発言をし、「いつか総理になると思う人」として吉村知事の名を書いたことを忘れたのだろうか。
松井市長の「30人宴会問題」が発覚した際のテレビでのコメントについては、
〈僕は元々飲食店への不合理な営業制限には反対の立場を主張しています。ですから「吉村さんのルールの決め方がおかしい」と指摘しました。「国民は不合理なルールに従わなくてもいい」という、ある意味吉村さん批判です。ただし「この不合理なルールを決めたのは吉村さんと松井さんなので、いくら不合理なルールであっても松井さんには守ってもらわないと府民への示しがつかない、だから反省して欲しい」という趣旨の批判コメントです。そもそも大阪府の今回のルールには会食人数の上限は設定されていません。一テーブル4人まで、一店舗2時間程度という制限だけです〉
前出の永田町関係者は、
「橋下さんは、“吉村さんが決めたルールがおかしい”と自分は維新を批判しているじゃないか、と言いたいのでしょうが詭弁です。ルールの決め方の問題に論点をすり替えることで、全体として松井市長を不祥事から守る発言となっているのは明らかです」
と、こう語る。
「“会食人数は上限が設定されていない”という主張についても、ルールとして決まっているのはあくまで“1テーブル当たりの人数”で、飲み会のグループの人数は上限が定められていない、という詭弁でしかありません。また、この主張は松井市長が行った弁明と全く同じものです」
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