正念場を迎えた「甲子園のヒーロー」 ヤクルト、阪神、ロッテの“元有望株”はブレイクなるか?

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 いよいよ2月1日にプロ野球がキャンプインとなるが、野球ファンにとって楽しみなシーズンが到来した。4球団が競合した隅田知一郎(西武)や、2球団が競合した高校ナンバーワン投手と評された小園健太(DeNA)といったドラフト1位ルーキーに対する注目度は今年も高い。しかしその一方で、入団時は高い期待を背負いながら、年々影が薄くなっている選手がいることも確かだ。【西尾典文/野球ライター】

「明らかに手抜き」

 ともにドラフト1位で日本ハムに入団した清宮幸太郎と吉田輝星などはその代表格であり、新庄剛志“ビッグボス”が新たに就任しただけに勝負のシーズンであることは間違いない。そこで今回はかつて球団期待の星だったものの、今年が正念場となる選手についてピックアップし、ブレイクに必要な要素を探ってみたい。

 まず、昨年日本一に輝いたヤクルトでは寺島成輝の名前を挙げたい。履正社時代は高校ナンバーワン左腕として評判となり、2016年のドラフト1位で入団。4年目には、中継ぎで30試合に登板して防御率2.48と、開花を予感させたが、昨年は再び二軍暮らしが続き一軍ではわずか1試合の登板に終わっている。

 実は、スカウト陣から高校時代の寺島について“気になる評価”を耳にしていた。

「寺島の投手としての能力は間違いないと見ているのですが、相手の打者に合わせて明らかに手抜きをして投げるのが気になりますね。高校生相手ではそれでも抑えられるかもしれませんが、プロの打者を相手にするとそうはいかない。上手く力を抜きながら投げることも確かに大事ですけど、早いうちから楽をすることを覚えてしまって、それが裏目に出ないといいのですが……」

 堂々とした体格の割に相手を圧倒するようなボールは少なく、コントロールを気にしてか年々フォームが小さくなっている印象も受ける。ストレートは140キロ台前半で、変化球も一通りあるが何か特別に目立つボールがないというのが現状だ。

 ただ、それでも寺島にとって大きな救いなのは、チームの投手陣が手薄な状況にあることだ。特に、左投手は先発もリリーフもコマ不足は明らかで、昨年は巨人から移籍した田口麗斗は防御率4点台ながら貴重な戦力となっている。それを考えれば、まだまだ寺島の入り込む余地はあるはずだ。ボールの速さが変わらないのであれば、新たな球種を覚えるかフォームを変えるというのも一つの方法である。昨年は同僚の大下佑馬がシーズン途中でサイドに転向して活躍したのは良い参考例なだけに、寺島もそろそろ思い切って何かを変えて勝負したいところだ。

「守備にも影響していると指摘された」

 阪神では藤浪晋太郎が話題になることが多いが、もう1人忘れてはならないのが同期のドラフト2位で入団した北條史也だ。八戸学院光星では、2年夏から3季連続で甲子園準優勝を果たし、3年夏には1大会4本塁打も放っている。プロ入り後は4年目の16年に122試合に出場して105安打を放ったが、その後は徐々に成績が低迷。昨年は過去6年間で最低となる10安打という成績に終わり、昨年10月には左肩の手術を受けている。

 キャンプも当初はリハビリからのスタートとなるが、今年で28歳と老け込むにはまだまだ早い年齢である。チームの内野陣を見ても、昨年はルーキーの中野拓夢がショートでブレイクしたが、今年はコンディション不良で出遅れており、セカンドの糸原健斗も守備に大きな不安を抱えている。また、内野手の若手は左打者が多いだけに、右でパンチ力のある北條の存在はやはり貴重だ。カギになるのは守備力の強化だろう。内野ならどこでも守れる器用さはあるが、安定感には乏しいところがある。

 ちょうど成績が落ち始めた17年に本人に話を聞いた際に、「打撃の結果を引きずって、守備にも影響しているとコーチに指摘された」と話していたが、当時から課題はまだ解消されていない印象を受ける。

 昨年のキャンプで臨時コーチを務めた川相昌弘氏(今年から巨人ファーム総監督)も、阪神の守備について守備固めが機能していないことを課題と語っていた。左肩の手術で出遅れるのは確かに痛いが、守備を見直す良い機会でもある。元々の能力は高いだけに、守備面の安定感がアップすれば、まだまだ一軍で活躍できる余地はあるだろう。

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