「ドカベン」1回しか負けなかった明訓高校 水島新司さんが当初想定していたその相手は弁慶高校ではなかった
作画が良すぎたため
最後のトリビアも明訓が破れた弁慶戦に関するものである。この試合は2-2の同点で迎えた9回裏。弁慶高校が1死一、二塁のチャンスから、一塁走者だった武蔵坊の身体を張った“弁慶の立ち往生”と二塁走者だった義経の大ジャンプ“八艘飛び”により弁慶高校が劇的なサヨナラ勝ちを収める……という展開だった。しかし、当初の水島さんの構想によると“0-0の同点で延長18回に突入し、明訓がサヨナラ負けする”という結末だったそうだ。
変更された理由は、この試合の明訓の打順にある。試合の数日前、義経はテレビのインタビューを通じて、明訓戦での「初球ど真ん中ストレート」を予告。これを受けて明訓の監督・土井垣将は、悪球打ちの1番・岩鬼と4番・山田の打順を入れ替えた。土井垣の目論見どおり山田はプレーボール・ホームランを放つのだが、当初の予定ではピッチャーゴロに倒れるハズだった(投手・義経の凄さを描こうとしたものと思われる)。だが、この際に描いた山田のスイングが予想以上の出来栄えだったため、急遽、ホームランにしてしまったというのだ。水島は描いたスイングやピッチングフォームによって打球の行方を変えるクセがあったというが、この試合がまさにそれである。こうして0-0のまま延長18回に突入する……という展開はボツになったという。
のちにプロ野球を舞台とした『プロ野球編』が生まれるが、そのきっかけとなったのが西武ライオンズや読売ジャイアンツで活躍した清原和博の一言だったそうだ。いわく「ドカベンたちは今、どうしているんですか。プロで一緒にやりたいですよ」。また、元メジャーリーガーのイチローも「僕は殿馬と1・2番コンビを組みたい」と劇中での共演を希望している。『ドカベン』に憧れてプロを目指した選手は数え切れないほどだ。今、改めて不朽の名作を読み返してみたい。
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