分科会メンバーも「飲食店時短」の意味を疑問視 専門家らが「尾身会長」を徹底批判する理由

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「疲弊した経済を回すとき」

 さて、病気の特性の変化を受け、藤田氏が訴える。

「インフルエンザには使わなかった濃厚接触者の概念や、まん延防止等重点措置を、オミクロン株には使うべきでない、というのが私の考えです。医療従事者の休職もピークのいま、濃厚接触者の待機期間を6日に短縮することで、多くの現場が救われた。さらなる短縮の議論のためにも、データや私たちが経験したことを、全国のみなさんに伝え、役立てていただきたい気持ちです。沖縄県は、1月31日まで適用されている“まん防”の延長を知事が政府に要請しましたが、第5波までのような画一化された対応を、全国に先駆けて沖縄から変えていく必要があります。いまは疲弊した経済を活性化するときで、オミクロン株の病原性であれば、経済と医療を両立させるべきです。私のような感染症の専門医が、経済活性化の必要性を訴えることが、とても大事なメッセージになると思っています」

 もっとも、沖縄にも解決していない問題はある。名護市にある北部地区医師会病院呼吸器・感染症科の田里(たさと)大輔医師によれば、

「私たちの病院は900人超のオミクロン株の患者を診てきましたが、ここにきて高齢者の患者さんが多く、80~90代の方も多く入院されています。高齢者施設でのクラスターも増え、施設職員から感染するケースが多い。こうして介護が必要な高齢者が入院すると、コロナ自体の重症者は少なくても医療体制は逼迫します。そもそも高齢者は肺や心臓などに持病があることが多く、感染すれば持病の悪化も相まって入院が長引きやすく、コロナ病床があっという間に不足する。この状況は、東京や大阪でもすぐに見られると思います」

 要は、介護施設の職員にも医療従事者同様、毎日の検査を義務づけるなど、ピンポイントの対策こそ必要だ、という話。適用地域が広がる“まん防”で、こうした問題は解決できまい。

説明をスキップしたことが問題

 閑話休題、あらためて尾身発言について考えてみたい。東京大学名誉教授で食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏はこう語る。

「私は尾身会長の発言は当たり前の内容で、間違っていないと思います。これまでと性格が異なる変異株が出てきた以上、対策は変更されてしかるべきです。とはいえ、2年以上に及んだ、人流抑制策からの転換を提起したのだから、これまでの対策への検証が不可欠で、それをせずに発言したから批判を浴びたのです。また、感染が急拡大した場合、若年層は検査せず、とも言いました。高齢者や基礎疾患がある人が確実に受診できるように、という狙いでしょう。重症化率が低いオミクロン株であることを考えれば間違っていない。これも批判されたのは、説明しなかったからです」

 藤田氏も同様に、

「オミクロン株への対策については、潜伏期間やウイルス排出のピーク、致死率等の本質を見極めたうえでの、科学的な説明が必要です。尾身会長の発言は、結果的に正しいと思いますが、どうしてこの対策か、という説明をスキップしてしまっていると思いました」

 と指摘。医師で東京大学大学院法学政治学研究科教授の米村滋人氏も言う。

「専門家を称するなら専門的知見をきちんと述べるべきで、政策判断に踏み込んで発言すべきではないと思います。今回の尾身さんの発言は、専門家が政策判断に踏み込んだがゆえに、社会的混乱を巻き起こしたように見えました。本来、専門家として人数制限のほうが効果はあると考えるなら、その科学的根拠を示すべきで、有効性については社会が判断することです。今回の尾身さんの発言や提言案は、従来のものよりよいと思います。しかし、人流抑制のなにが間違っていたか、きちんと説明して舵を切るなら納得しますが、根拠も示さずに今回はこっちがいいという、尾身さんの胸三寸で国の方針が右往左往することが続いては、いい結果は生まれない。発言に責任をもてない人は、発言してはいけないんです」

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