分科会メンバーも「飲食店時短」の意味を疑問視 専門家らが「尾身会長」を徹底批判する理由

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「リスクの高い場所のみの人数制限が望ましい」

 慶應義塾大学経済学部教授で、分科会構成員の小林慶一郎氏が、「修正の議論には加わっていない」と断ったうえで、それまでの議論について説明する。

「デルタ株までとは異なり、感染力が強い一方で重症化リスクは低く、軽症の患者さんが非常に多いオミクロン株に対しては、人流抑制など経済全体に対する強い制限をかけても、それほど感染を抑えられないだろう、ということです。本当に感染を抑えるには、いままで以上に強い経済制限が必要ですが、いまの社会の状態で、国民のみなさんにそれに応じていただくのは難しい。また、それをすると生活に困窮し、自殺に追い込まれるような人も、さらに増えてしまいかねない、という側面もあります。そう考えると、感染が広がりやすい飲食店やホームパーティーの人数を減らすなど、ピンポイントの対策のほうが適している、というのが人数制限の意図。3密を避ける、マスクを着ける、という基本の対策は継続していただき、それ以外では、リスクの高い場所、場面での人数制限が望ましいのでは、という考え方です」

玉川徹氏の無責任な発言

 こうして話を聞くと、尾身発言には、根拠があったとわかるが、それを説明しないままだから、不安をあおりたいワイドショーの餌食にされてしまう。

 1月24日放送のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」では、コメンテーターで同局の玉川徹氏が、尾身会長の人流より人数発言について、「分科会には経済の専門家もいて、経済界はずっと強い対策を嫌がっていますよね。そういうことも背景にして、圧力があるんだと思います」と、臆測で無責任に発言したが、小林氏によると事情が違う。

「分科会のなかでこうした案が、経済学者の側から出て、感染症の専門家の方々が了承した、ということではありません。むしろ感染症の専門家の間で議論が始まり、感染症が専門でないわれわれも賛同した、という感じでした。提言案を作るに当たっても、感染症の専門家の方々をふくめ、反対の声は上がらなかったと思います。これまで感染症の専門家の方々は、人流抑制に力を入れておられた面はあると思いますが、オミクロン株は違う、という考えになられたのではないかと思います」

 一足先に感染が爆発した沖縄の事例を、分科会のメンバーはそれなりに参考にしていたのだろうか。

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