分科会メンバーも「飲食店時短」の意味を疑問視 専門家らが「尾身会長」を徹底批判する理由
人流より人数。ようやく真っ当な対策か、と期待させた分科会の尾身茂会長だが、その根拠も示さないまま知事らにやり込められて後退した。2年間、日本はこんな連中に牛耳られてきたのか。沖縄でわかったオミクロン株の実態をもとに、日本のコロナ対策を問う。
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当たり前のことだが、オミクロン株とどう向き合うか、という議論は、科学的な知見やデータに基づかないかぎり、意味をなさない。ところが、われわれの生活に甚大な影響をおよぼす感染対策は、科学を無視して決められるらしい。
東京など1都12県を、まん延防止等重点措置の対象に加えることを、政府分科会が了承した1月19日、分科会の尾身茂会長は「これまでの人流抑制でなく、人数制限がキーワードになると考えている」との見解を示した。さらには、「ステイホームなんて必要ないと思う」と述べたところが、全国の知事たちに噛みつかれたのである。
同じ日に分科会が了承した政府の基本的対処方針には、自治体がとるべき対策として「混雑した場所などへの外出自粛要請」が明記されていたこともあり、21日の全国知事会では、尾身発言について懸念する声が続出。東京都の小池百合子知事も、都民に「不要不急の外出」の自粛を求め、「政府と分科会もしくは尾身先生のほうで、詰めていただきたい」と苦言を呈した。
およそ科学者とは呼べない姿勢
しかし、尾身会長は科学者なのだから、発言の科学的根拠を示せばよかったはずなのに、こともあろうに、全国知事会の平井伸治会長(鳥取県知事)に、「ご迷惑をかけた」と陳謝。その結果、最終的に政府に提言された対策には、「知事の判断により、人流抑制を加味することもありうる」という文章が加わってしまった。
医師で元厚労省医系技官の木村盛世さんは、
「尾身会長はなぜ人流抑制が不要になったのか、科学的根拠を示さないから、全国の知事も困惑します」
と言いつつ、加える。
「反発を受け、尾身会長は提言の内容を修正しましたが、ズバリ“人流抑制のステージは過ぎた”と言えばよかった。科学者なら、科学的根拠にもとづいて説得すべきであって、反発されたら内容を変更する、という姿勢からは、尾身会長の科学者としてのポリシーは感じられません」
残念ながら、似たことがもうひとつあった。
尾身会長らは20日、厚労省アドバイザリーボードの会合で、「若年層の多くは感染しても症状は軽く、検査をせず症状のみで診断することも検討すべき」と提言していた。ところが、厚労省やほかの専門家から、「検査件数を絞ろうとしていると誤解される」だの、「若者が疎外感を抱く」だのと異論が百出。公表された提言は、「検査をせず」という文言が削られていた。
科学的根拠を示さず、反発されればすぐに引く、こんな風見鶏は、およそ科学者の姿勢ではない。そんな人に2年間も振り回されてきたとは、暗たんたる気持ちになるが、それはともかく、最初に尾身会長の発言の根拠を確認しておきたい。
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