韓国は猿芝居外交のあげく四面楚歌に… 「文在寅」退任でも日韓関係は修復せず
食糧難の北、監獄リスクの南
――北朝鮮はなぜ、米国との対話をしたがるのですか。
鈴置:米国が主導する国際的な経済制裁を緩和させたいのでしょう。コロナ対策で北朝鮮は対外的な交易を全面的にストップ。経済は破綻の危機に瀕しています。これを打開するには米朝対話を再開し、制裁を緩めてもらうしかありません。
ここで馬鹿を見たのが、文在寅政権です。米朝を仲介して朝鮮半島に平和をもたらしたと国民に功績を誇ってきた。それなのに核・ICBM実験の再開示唆ですべてがぶち壊しになった。
ことに今、退任後の監獄送りを避けるため、文在寅大統領は決定的な功績を必要としている。それが朝鮮戦争の終結を謳う「終戦宣言」でした。しかし米国も北朝鮮も、実質的な意味はなく文在寅の監獄送り防止用と見抜いていますから、終戦宣言をしつこく持ちかけてくる韓国を相手にしませんでした。
文在寅政権は2月4日からの北京五輪の場を利用、米中南北、せめて中南北の首脳会談を開いて終戦宣言を実現しようとしました。が、北朝鮮が五輪不参加を決めたため、この構想も霧散。そこに追い打ちをかけたのが、両実験再開の示唆だったのです。
さしたる功績なしで任期を終える文在寅政権。大統領はじめ、幹部は暗澹たる思いでしょう。多くの人が監獄に入る悪夢をみているはずです。
ホラがブーメランに
――「米朝首脳会談を仕切った」などとホラを吹かねば良かったのに。
鈴置:確かに、今となっては猿芝居外交が裏目に出ました。ただし、当初の効果は抜群でした。第1回米朝首脳会談の翌日、2018年6月13日の統一地方選挙で与党「共に民主党」は圧勝。政権とすれば猿芝居を打つのは当然でした。
それに、猿芝居と国民が怒りだす可能性も低かった。2017年に北朝鮮は核・弾道ミサイル実験を繰り返し、米国は先制攻撃も辞さないとの姿勢を打ち出しました。蚊帳の外に置かれた韓国人は、戦争の危機に怯えたうえ、自分の運命さえ決められないことにいら立っていました。
そこに「状況を仕切って見せる」大統領が登場したのです。それが本当かどうかは重要ではありませんでした。自らの手で運命を切り開いているととにかく信じたい――。こんな韓国人の心の奥底に潜む願望に文在寅政権は見事に応えたのです。
21世紀になる頃、「中国の台頭にどう対応するか」との質問をアジアの人々にぶつけて歩いたことがあります。様々の答が返ってきましたが、韓国人だけからはありませんでした。
「考えても意味がない」と言うのです。千年以上も周辺大国に自らの運命を決められてきた朝鮮半島の人々にすれば、ジタバタしても仕方ないのです。元寇の時も、19世紀に西洋が東洋を植民地化した「西洋の衝撃」の際も、「団結すれば何とかなった」日本人とは、世界観が180度異なります。
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