【カムカム】ジョーの自殺を食い止めた場面で…「るい」と「安子」がどんどん似てきた

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近松門左衛門の作をリスペクト?

 この作品に原作はなく、藤本さんの完全オリジナルなのは知られている通り。ただし、藤本さんがリスペクトしている物語はある気がする。江戸時代の庶民を熱狂させた近松門左衛門の世話物である。

 藤本さんは2016年、近松の生涯を痛快に描いたNHK時代劇「ちかえもん」で向田邦子賞を受賞した。出色の作品だった。この時、近松について調べ抜いたとされている。

 安子とるいを離ればなれにした元凶は「たちばな」の再興資金を持ち逃げした算太(濱田岳、33)にほかならないが、近松の作品にも横領が招く悲劇は多い。

 算太は母娘の未来の全てを奪った。一方、近松の「曾根崎心中」の徳兵衛は、信頼する親友に金を使い込まれ、全てを失い、心中に追い込まれる。安子も徳兵衛も一切悪くないから、観る側は切なくてたまらない。

 家族愛、親子愛を織り込むのも近松の得意技だった。近松の時代から約300年余。私たちは藤本脚本に釘付けになっている。日本人の内面はそう大きく変わってないのではないか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮編集部

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