【カムカム】ジョーの自殺を食い止めた場面で…「るい」と「安子」がどんどん似てきた
「血族」(1980年)を思い起こさせる
この作品は「どうして、るい、ひなた(川栄李奈、26)が存在しているのか」を描くと同時に、観る側すべての人に「なぜ、『私』はここにいるのか」を考えさせようとしているのだろう。
山口瞳氏の小説を基にしたNHKの傑作ドラマ「血族」(1980年)や全米が熱狂したアレックス・ヘイリー原作のドラマ「ルーツ」(1977年)を思い起こさせる。この作品を観るうち、無意識のうちに他界した両親や祖父母を思い出している人は少なくないのではないか。
るいとジョーは京都の北野天満宮の近くで回転焼屋「大月」を始めた。これも血の導きにほかならない。
回転焼は地域によって大判焼、今川焼などと名称が変わるものの、決め手があんこであるのは一緒。るいのあんこは絶品だと評判になる。その作り方を教えてくれたのは安子だが、作り方を編み出したのは橘杵太郎(大和田伸也、74)である。
杵太郎は安子の実家である和菓子店「たちばな」の創業者。るいが生まれる前に亡くなった曾祖父だ。
「小豆の声を聞け。時計に頼るな。目を離すな。食べる人の幸せな顔を想像して、おいしゅうなれ、おいしゅうなれ…」(杵太郎、第2話)
「たちばな」のあんこの味は4代続いたことになる。技術が受け継がれたというより、血の継承だろう。正しくファミリーストーリーである。
血の繋がらない人たちとの絆もしっかり描かれているところも魅力。「たちばな」の近所にあった豆腐屋の娘・水田きぬ(小野花梨、23)は気持ちの良い女性だった。
戦前は安子の恋の悩みを気軽に聞いた。戦後はおはぎを売ろうとする安子に店先を貸す。安子の相談事は全て親身になって聞いた。
ある想像をしている。「るいに安子の渡米の真実を話す運命の人は、きぬではないか」と。安子は渡米理由を雉真家の誰にも明かさなかった。けれど親友のきぬに黙って出国したとは考えにくい。全てを告白しているのではないだろうか。
一方、ジョーの親友でライバルのトランペッター・トミー北沢(早乙女太一、30)は典型的な偽悪者。ジョーを見下すような言葉を繰り返すものの、本当はジョーが好きでたまらない。
関西ナンバーワンのトランペッターを決める「関西ジャズトランペッターニューセッション」での優勝を狙っていたが、ジョーが「出ない」と言うと、毒づき、貶し、そして落胆した。自分が優勝したいのなら、ジョーが出ないほうが好都合なのに。
ジョーがトランペットを吹けなくなったため、第58話で芸能プロ・ササプロの令嬢である笹川奈々(佐々木希、33)から「東京でステージに立ってみません?」と誘われると、喜ぶどころか激高した。
「ふざけんなよ! お前の親父がジョーを預かったんやろ。最後まで責任取れや!」(トミー)
好漢だ。ジャズマンの追っかけの短大生でベリーこと野田一子(市川実日子、43)も何かにつけジョー、るいの世話を焼く。
母娘は尊い友人もそろって得た。これも血なのか。あるいは教育か。気づいてみると、安子もるいも他人の悪口を言ったことが1度もない。良き友人に恵まれたのもうなずける。
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