韓国で続出するビルの悲劇「タワマンの床が抜けた」「足で蹴ると壊れるほどの強度」「凍ったコンクリート」「強風に煽られて崩壊」

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コンクリートの塊が道路へ落下

 他方、建設現場周辺では「5日ごとに1階ずつ積み上げられているように見えた」との証言も出ている。建設のスピードが異常に速かったという指摘なのだが、HDC現代産業開発は「事故が起きた棟の打設に関しては少なく見積もっても12~18日ほどの十分な養生期間を経ており、必要な強度が確保されていた」などと説明しているという。ただ、それでも日本で基準とされる日数の半分ほどのレベルだろう。

 マンションの崩壊は何も、HDC現代産業開発に限ったものではない。

 今月13日には、中興建設が亀尾(グミ)市で施工中のマンション(2024年完成予定)の鋳型部分などが強風に煽られて崩壊。事故当時、現場はかなりの強風が吹いていたといい、現場担当者も「強風によって鋳型部分が崩れて発生した事故で、人命被害はない」と取材に答えているのだが、2年後の完成を待ちわびる入居者にとってたまったものではないだろう。

 さらに同じ日には、釜山市でマンションの建設現場からコンクリートの塊が道路へ落下する事故が起こり、その翌日には華城(ファソン)市で行われているマンションの建設現場でコンクリートを固める作業を行っていた作業員2名が窒息死する事故も報告されている。

冬の夜になると

 一方、韓国のある建設会社が手掛けた新築マンションで、冬の夜になると便所の壁が割れて崩壊する事例が相次いで報告されているという。あたかも怪談のような話だ。入居者たちは当然、再施工を要求したが、会社側はまともな対応を取っていないと報じられた。

 韓国の新築マンションは通常2年の瑕疵補償を設けているが、この会社は新型コロナウイルスの感染拡大を理由に補修を先延ばしにし、結果として補償期間を満了させたという。にわかには信じがたい事例だが、現場からは怖がって泣く子供たちの声が聞こえてくるそうだ。

 最後に、日本人にとって他人事ではない事案について触れておこう。韓国に単身で駐在する日本人に人気のソウル市・麻浦(マポ)区には、“ハンファの失敗作”と呼ばれるマンションが存在する。ハンファ建設が初期に手掛けたこの物件は2004年に入居がスタートし、今も多くの日本人が居住しているマンションなのだが、筆者が知っているだけでも水漏れやボヤ騒ぎ、謎の虫が大量発生するなど多くの問題が報告されている。すべてが建設会社側の責任とは断定できないものの、ありがたくないニックネームがつけられているのは事実だ。

 文政権樹立以降、ソウルではマンション価格が上昇の一途を辿っていることは何度も報じられてきたが、価格の動きと裏腹に業者側の安全意識が低下し、ずさんな工事が横行しているのだとしたら悲劇としか言いようがない。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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