春の選抜大会 関東・東京地区の6校目は東海大相模か二松学舎大付か マニアが注目するウラ事情
とんでもない逆転選考
ここで過去10年の“関東8強”対“東京準優勝”の結果を見てみよう。選ばれたチームが◯で、不選出のチームが×。
2011年
関東……◯横浜(神奈川)2-6作新学院(栃木)
東京……×帝京0-2関東一
2012年
関東……×前橋育英(群馬)3-5浦和学院(埼玉)
東京……◯早稲田実1-2安田学園
2013年
関東……◯横浜(神奈川)3-5佐野日大(栃木)
東京……×二松学舎大付6-7(延長10回)関東一
2014年
関東……×東海大甲府(山梨)0-4浦和学院(埼玉)
東京……◯二松学舎大付2-3東海大菅生
2015年
関東……◯花咲徳栄(埼玉)1-2木更津総合(千葉)
東京……×二松学舎大付3-4関東一
2016年
関東……×慶応(神奈川)3-4前橋育英(群馬)
東京……◯日大三6-8早稲田実
2017年
関東……◯国学院栃木(栃木)2-3慶応(神奈川)
東京……×佼成学園5-11日大三
2018年
関東……◯横浜(神奈川)2-9(7回コールド)春日部共栄(埼玉)
東京……×東海大菅生3-4国士舘
2019年
関東……◯花咲徳栄(埼玉)1-2山梨学院(山梨)
東京……×帝京0-6国士舘
2020年
関東……◯東海大相模1-2東海大甲府(山梨)
東京……×日大三1-6東海大菅生
神奈川県の高校が関東5枠目に選ばれた場合、4勝1敗と高い勝率を誇っていることがわかる。逆に東京は接戦負けなら2校選ばれるケースが多い(11年以前にも05年秋に3-4で惜敗した東海大菅生や、08年秋に1-3で負けた早稲田実、09年秋に4-5で競り負けた日大三が選ばれている)。だが接戦で負けたにも関わらず、二松学舎大付は2度も落選の憂き目にあった“不運のチーム”と言えよう。
ポイントは、神奈川勢の厚遇と二松学舎大付の落選は果たして妥当だったのか、ということだ。検証してみると、神奈川のチームが勝ち取った4回中、3回は横浜だった(20年の東海大相模は妥当であろう)。関東大会準々決勝敗退で選出される確率は、単純計算でわずか1/5。その1/5に何度も滑り込んでいる点には驚かされる。
まず、11年の秋季関東大会だが、準々決勝4試合中2試合がコールド。そのため高崎(群馬)に2-4で敗れた東海大甲府(山梨)との争いとなった。点差では東海大甲府に分があるが、シード扱いだったため、この試合が関東大会初戦だったのが響いた。これで東京大会準優勝の帝京との争いになったが、帝京は関東一に善戦するも1安打しか打てず、完敗に近かった。よって「投手力と守備力は互角だが、打線に波がある帝京に比べ、横浜はソツがない」との理由で、横浜が選出された。
問題は残りの2つのケースである。
13年の秋季関東大会準々決勝で佐野日大(栃木)は横浜に5-3で勝利し、選抜出場を当確にした。残る準々決勝3試合もすべて2点差以内の接戦となったため、5枠目争いは非常に難しく、さらに東京大会決勝も延長戦の末に1点差の接戦だった。東京大会決勝が1点差だと、東京2枠になる可能性が高くなる。二松学舎大付も関東・東京6枠目のチャンスがあり、5校が絡む大混戦になった。
関東5校目には地域性に加え、優勝校の白鴎大足利(栃木)に1-3で惜敗した習志野(千葉)がやや有利と見られていた。横浜は負けた佐野日大が準決勝で桐生第一(群馬)に0-5でまさかの完敗を喫したのが致命的とされた。
しかし、選考結果で関東・東京の最後の枠に選ばれたのは横浜だった。佐野日大のプロ注目左腕の田嶋大樹(現・オリックス)から3点を奪った打線が評価され、投手力と守備力も高い安定感を誇るとして二松学舎大付に競り勝ったのである。
そしてとんでもない逆転選考が起きたのが19年の選考会だった。前年18年の関東大会で横浜は春日部共栄(埼玉)の前になす術なく7回コールド負け。準々決勝残り3試合も1試合が7回コールドで、残る試合も7点差と4点差がついており、どの学校も5校目に推すには決め手に欠ける、難しい状態になっていた。
対する東京大会の決勝は1点差の接戦で終わった。よって関東・東京の最後の枠は、東京大会準優勝の東海大菅生で異論のないように思われた。それでも横浜が選ばれるためのアピールポイントがあるとすれば、ドラフト候補のエース左腕・及川雅貴投手(現・阪神)の存在と、神奈川大会決勝で関東大会優勝校の桐蔭学園に11-2で大勝したという点だっただろう。しかし現実はコールド負けした上に同じ神奈川勢の桐蔭学園がすでに当確と、地域性でも不利と相当厳しい。どう考えても横浜の出る幕はなかった。
ところが結果は横浜の大逆転選考だった。決め手は「最速153キロの速球を武器に奪三振率12.85を誇る及川は“日本一可能な逸材”。また、神奈川大会では関東大会優勝校の桐蔭学園に大勝している」という点。関東大会と東京大会を比較すると、前者のほうがレベルが高く、東海大菅生よりも横浜のほうが総合力で上回っているとも判断された。
関東大会優勝の桐蔭学園に神奈川大会で勝ってるというのは分かるが、関東大会準々決勝コールド負けで選出されたことなど過去1度もなく、モヤモヤ感が残ったのも事実だ。
こうして投手力が評価されて選抜出場を果たした横浜だったが、選抜の初戦では及川が関東大会準々決勝に続いて大炎上。明豊(大分)打線に13失点を喫して完敗している。
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