”白いロマンスカー”は引退も… 効率だけじゃない「小田急電鉄」の哲学
毎年3月は、鉄道各社が一斉にダイヤを改正する。2020年からつづくコロナ禍により、鉄道需要は急激に減少している。そうした状況下もあり、鉄道各社は今春のダイヤ改正で大幅な減便を打ち出した。
【写真】2020年のリニューアル後もマンサード屋根が残る向ヶ丘遊園駅
減便は、利用者にとって不便になることを意味する。だが利用者からは、コロナ禍を受けての減便は仕方がないと冷静に受け止める人は少なくない。
そうした中でも、鉄道ファンをザワつかせているのは小田急電鉄が昨年12月17日に発表した来春のダイヤだった。
小田急は来春に50000形VSEの定期運行を終了し、臨時列車化すると発表。50000形VSEはダイヤ改正後も臨時列車として使用されるが、2023年秋をメドに完全に引退する予定だ。
鉄道に興味が薄ければ、50000形VSEと言われてもイメージしづらい。普通ならロマンスカーで済ませてしまうだろう。
しかし、現役で走っているロマンスカーは大別して50000形VSEのほか、30000形EXEとミニ改造されたEXEα、60000形MSE、70000形GSEの4タイプある。
そのなかでも、2005年に登場した50000形VSEは“白いロマンスカー”と呼ばれ、ひときわ高い人気を誇ってきた。
VSEはロマンスカーの象徴でもあった前面展望や“走る喫茶室”と呼ばれた自席まで弁当やコーヒーなどを運んでくれるシートサービスを復活させた車両でもある。こうした背景から、VSEは小田急ファンのみならず広く人気を得ていた。シートサービスは一足早く2016年3月のダイヤ改正で姿を消した。
そして、引退発表。VSEの引退発表は、まったく予想されていなかった。なぜなら、VSEより早く登場したEXEはリニューアル改造を施されて活躍しているからだ。
小田急電鉄CSR広報担当者は、「VSEの車体はアルミ合金押出形材でダブルスキンという特殊な構造です。古い車両は部品の調達などが困難ですが、特にVSEは部品の調達のみならず修理にも手間がかかってしまうのです」と早い引退理由を説明する。
人気の高い白いロマンスカーが引退しても、まだロマンスカーは残っている。それでもロマンスカーのエースともいえるVSEの早すぎる引退は大きな話題になった。
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