冬ドラマ 初回、2回目を見逃した方のために…これからでも観ておきたい4作品

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 民放のプライム帯(午後7時~同11時)の1月期ドラマが出揃った。新作は10本。連ドラは序盤を見落とすと、「もう、いいや」となってしまいがちだが、これからでも観ておきたい作品もある。ご紹介させていただきたい。

TBS「妻、小学生になる。」(金曜午後10時)

 幸せな3人家族の中心だった新島貴恵(石田ゆり子、52)が10年前に亡くなった。交通事故だった。以来、夫で主人公の圭介(堤真一、57)は生きる気力を失う。勤務先の食品メーカーでも覇気がない。

 圭介は生前の貴恵に向かって、「僕の人生の主人公は君だ!」と、照れもせずに言う男だった。「僕なんか、ただのオマケ」とも。ベタ惚れだった。茫然自失の状態が長く続いているのも無理はなかった。

 20歳になる娘の麻衣(蒔田彩珠、19)も貴恵のことが大好きだった。引っ込み思案な自分を支えてくれていた。やさしく包み込んでくれた。途方もなく大きな存在だった。貴恵がいなくなってからは麻衣も生気を失っている。

 そんな2人の前に現れたのが小学4年生の白石万理華(毎田暖乃、10)。貴恵の生まれ変わりだった。外見は万理華だが、内面は貴恵。過去の記憶から考え方、包丁の扱い方まで貴恵そのものだった。

 生まれ変わりの貴恵は9歳まで万理華として暮らしていたものの、10歳の誕生日の直前、自分が貴恵であることを思い出す。その途端、一目散で新島家へと向かい、圭介に笑顔で「ただいま」と告げる。嘆き続けるばかりの2人にハッパをかけるため、天国から帰って来たらしい。

 ここまで書けばお分かりの通り、この物語のメインテーマは家族愛。亡き妻の転生先が小学生という設定であることから、コメディ色も濃い。

 外見は小学生の貴恵が、中年の圭介に向かって、「私が死んでから、どういう食生活してきたのよ!」などと叱るのだから、愉快だ。

 最初、圭介と麻衣は貴恵の転生を信じなかった。

「君はどこの子なんだ。誰にウチのことを聞いた?」(圭介) 

 おかしな小学生だと思い、顔をしかめた。そりゃそうだろう。

 だが、貴恵と口調が一緒である上、彼女のお気に入りだった皿を食器棚から躊躇なく選んだことなどから、圭介は万理華が本当に貴恵ではないかと思い始める。

 2人が最初から貴恵の転生を信じた訳ではなかったのと同じく、大半の視聴者も物語の冒頭から作品に引き込まれたのではないはず。なにしろ設定が途方もない大ウソなのだから。

 けれど、堤、石田、蒔田、毎田という演技巧者がそろったことにより、大ウソにリアリティーが生じ、観る側を引き込んだ。ドラマも映画も現実味の乏しい作品ほど、うまい役者を揃えないと観る側を騙せない。

 堤と石田の演技はいつもながら出色。抑揚の効いた堤の演技が作品全体のフレームと化している。石田はかわいらしくて芯は強い貴恵に成りきっている。

 蒔田が昨年10月末までNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」に出演し、ミーちゃんこと未知役を好演していたのは知られている通り。映画界では既に主演級で評価も高い。この作品でも実力を見せつけている。演技がリアルだ。

 毎田も朝ドラ出演者。2020年度後期の「おちょやん」で、杉咲花(24)が演じたヒロインの子供時代と姪の2役を演じた。その後も松竹新喜劇の舞台に立つなど活躍を続けてきた。

 子役の役割は子供を演じること。今回は違う。毎田は自分を大人の貴恵に見せなくてはならない。難しいはずだが、違和感を抱かせない。大人風の口調や仕草が巧みだからである。

 演出もいい。貴恵は連日走って小学校から新島家に向かう。赤いランドセルを背負って疾走する。圭介と麻衣のことが気になってたまらないのが分かる。

 けれど万理華としての暮らしもあるから、夕方になると、「また来るね」と言い残し、去って行く。二重生活をしている上、学校もあるから、忙しいのだ。

 米映画「天国から来たチャンピオン」(1978年)や映画「黄泉がえり」(2003年)など死者が転生する作品は映画もドラマも枚挙にいとまがない。なぜ、いつの時代も求められているのだろう。

 その理由の1つは誰にでも帰って来て欲しい人がいるからではないか。もう1度会って話したい人がいるはず。みんな圭介と麻衣のような一面を秘めているので、転生する作品が受け入れられるのだと思う。

 第1話の後半、貴恵は新島家への出入りをやめようとする。麻衣に強く拒絶され、圭介も半信半疑だったからだ。

 洋食店のシェフだった貴恵は2人に別れのプレゼントとして、料理をつくる。圭介にはお弁当、麻衣にはケーキだった。

 圭介のお弁当には激辛のハバネロミートボールを入れた。2人にとって思い出の味だ。麻衣のケーキには独特のデコレーションを施した。2人はこれを見て、食べて、貴恵が本物だと確信する。3人の新しい関係が始まった。

 かなり笑える作品でもある。圭介が小学校の前で貴恵を抱きしめたところ、周囲の子供たちが一斉に防犯ブザーを鳴らし、教師がすっ飛んできた。貴恵を愛し抜いている圭介は見境がない。こんな場面が怪しくならず、おかしいのも堤がうまい人だからである。

 原作は「週刊漫画TIMES」に掲載されている村田椰融さんの同名漫画。脚本は2019年のヒット作「凪のお暇」(TBS)などを書いた大島里美さんが手掛けている。

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