「山口組の6代目は1月25日、80歳の誕生日に引退」――大拡散したメッセージの出所と「6代目」「神戸」「絆」を巡る苛烈な情報戦

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恒例の餅つき大会での出来事

 当時、裏取りに追われた捜査関係者は、「調べたところ、救急搬送されたとされる4月4日の翌日、高山若頭は墓参りに行き、ピンピンしていることが判明しました。既にツイートが投稿されたアカウントは閉鎖されており、なにゆえガセネタを投稿したのかはわかりません」と話す。

 発信者が特定できない以上、意図は不明である。ただ、背景には山口組を始めとする、ヤクザ業界が深刻な高齢化に悩まされていることがあるのでは、という見方をこの捜査関係者は語る。高齢者が多いことから自然とコロナに対しては業界全体が敏感だというのだ。荒っぽい稼業というイメージとはずいぶんかけ離れているが……。
「一般的な水準より遥かに厳しいコロナ対策を、これまでも配下の組員たちに強制してきた。その負担に不満を持つ組員らが、コロナを恐れる執行部を揶揄した、なんて見方もありますね」と明かす。どのくらい厳しいのか。

 たとえば昨年末に行われた恒例の餅つき大会も、かなり「厳重」なコロナ対策が講じられていたという。

「神戸にある総本部が2019年から使用停止に追い込まれているため、今年は三重県の組事務所で行われたんです。ところが、参加する組員には、事前のPCR検査が義務付けられ、陰性証明を書面で提出するようにとのお達しがありました」(前出の捜査関係者)

 さらに、

「PCR検査を受けてから餅つき大会当日まで、抗体検査も受けなければならないという徹底ぶり。PCR検査や抗体検査は全て自腹で、カネのない組員たちは不満タラタラだったと聞きます」(同前)

配下の組員が失望し?

 敵対組織でも警察当局でもなく、コロナに怯える6代目山口組。配下の組員がその姿に失望し、ガセツイートを流した可能性があるということか。

 もっとも、ネット空間の「情報戦」にとどまらないのが暴力団社会の必定でもある。分裂以降、全国各地で「新旧・山口」を巡る抗争とみられる事件が続発してきたのはすでに報じられた通りだ。

 高山若頭の出所を半年後に控えた2019年4月には、神戸山口組系幹部で当時の山健組若頭が神戸市内で刺され、8月にはその報復とみられる弘道会系組員への銃撃事件が発生。さらに10月には山健組本部の近くで組員2人が射殺され、高山若頭の出所後の11月には兵庫県尼崎市の路上で神戸山口組幹部が射殺されるに至った。

 捜査関係者が「高山若頭の出所を控え、6代目山口組の組員らは、手柄を立てようと躍起だった」と振り返る通り、抗争は熾烈さを増していた。

 年が明けた20年1月には、兵庫や愛知など6府県の公安委員会が、山口組と神戸山口組の両組織を、暴力団対策法に基づく「特定抗争指定暴力団」に指定した。特定抗争に指定されたのは、2012年に起こった福岡の道仁会と九州誠道会(現・浪川会)の抗争以来、全国で2例目。両組織は、市町村単位の警戒区域で組員が5人以上集まっただけで逮捕される他、組事務所への立ち入りや新たな事務所の設立も禁止されるなど、行動を厳しく制限されるようになった。

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