「山口組の6代目は1月25日、80歳の誕生日に引退」――大拡散したメッセージの出所と「6代目」「神戸」「絆」を巡る苛烈な情報戦
今や常識に
「1月25日の6代目の誕生日は80歳の傘寿で、その日に6代目の引退発表と、高山のカシラの7代目発表」――。昨年末、特定抗争指定暴力団・山口組の関係者の間で、このようなLINEのメッセージが瞬く間に拡散した。「6代目」が山口組トップの司忍組長(本名・篠田建市=79)、「高山のカシラ」が組織ナンバー2の高山清司若頭(74)を指すことは明らかだった。誰がどんな意図で情報を流したのか。3つに割れた山口組を巡る情報戦について詳しく伝える。
【写真】6代目山口組2トップと神戸山口組の井上組長による除籍処分
警察幹部が解説する。
「警察当局としても当然、メッセージの内容は把握しています。司組長から高山若頭への代替わりは絶えず言われていたこと。ただ、今回の“1月25日の誕生日をもって司組長が引退”というのは、一部の下の者がインターネットに書き込んだ内容が拡散したらしいです。ヤクザの世界でもネットやSNSを使った『情報戦』は今や常識になっていますが、まさにその一端というところでしょう」
国内最大の暴力団組織・山口組が分裂したのは2015年8月。司組長の出身母体・弘道会の組織運営に反発を募らせた一部幹部が、山健組を中心とした「神戸山口組」を結成し、トップに山健組の井上邦雄組長(73)が就任した。2017年4月には、さらに神戸側も分裂騒動を起こし、一部幹部が離脱して「任侠団体山口組」を立ち上げ、その後、「絆會」と改称している。
コロナ禍の「緊急事態」ツイート
前述の警察幹部は、こう指摘する。
「分裂騒動を機に捜査側も、山口組関連のネット上の書き込みや構成員同士がLINEで交わした文書に、以前にも増して注意を払うようになりました。“上納金の厳しい徴収に加え、名古屋(弘道会)にペットボトル飲料を買わされた”といった離脱組の愚痴など、明らかに印象操作を狙ったものも少なくなく、『情報』として取り扱うには慎重な裏取りが必要となりますが」
現在も三つ巴の睨み合いが続く「6代目」「神戸」「絆」の関係者にとって、群を抜く経済力で弘道会支配を確立した高山若頭の動向は最大の関心事である。2019年10月に恐喝罪での服役を終えて出所した高山若頭を巡る「情報戦」も、おのずと熾烈を極めている。
冒頭の「人事情報」はまさにその一例だが、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した2020年4月に投稿された「緊急事態発生」を伝えるツイートも当時、関係者の間では一騒動となった。
当該のツイートは、「緊急事態発生とは4月4日23時ごろ、6代目山口組若頭高山清司氏他3名、部屋住み2名、味覚障害などコロナ感染の疑いで緊急搬送。検査の結果、陽性。弘道会緊急事態。高山若頭の現在の容態は不明です」という内容である。冒頭で触れたツイート同様、文法が少し変なのだが、そこがリアルといえばリアルだ。
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