デジタル化促進の「改正電帳法」で企業の負担増 専門家は「電子データの保存は二度手間」

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「今年に入って顧問先の企業からの相談が殺到しているんです」

 そう話すのは、税理士で立正大学客員教授の浦野広明氏である。相談とは今年1月から施行された改正電子帳簿保存法(改正電帳法)なる新法についてだ。なぜこの法律が必要なのか。

「旧電帳法は1998年に施行されており、第1条に〈納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する〉と書かれています。一般に企業は納税関係の帳簿を7年間保存しますが、大量の資料を段ボールに詰めて保管するなどコストは馬鹿になりませんでした」(国税庁担当記者)

 たとえば、税務書類を紙の状態で保存するだけで、経済界全体で年間3千億円が費やされているという試算もある。そこで、総勘定元帳など、納税関係の書類に関しては一定の条件のもとにPDFファイルなどの電子データで保存することを認めたのが電帳法なのだ。いうなれば「デジタル政府」の先駆けみたいな法律である。ただし、「電子データで保存しても構わない」というレベルのものだった。これが、大きく変わったのが1月1日だ。

「改正電帳法の大きなポイントは、電子取引の際にやりとりした情報を電子データで保存することが義務化されたことです」(同)

負担軽減になるのか

 で、現場はどんなことになっているのか。すでに、その“洗礼”を受けている方もいるだろうが、アマゾンでの買い物はもちろん領収証を電子ファイルの形にして保存、取引に関してメールでやりとりすればそれも保存、クレジットカードの利用明細データ、交通系カードの支払いデータも同様だ。電子データには2カ月以内のタイムスタンプなどで「真実性」も確保しなければならず、税務署がいつでも見られるように「可視性」まで必要とされる。経理担当者も従業員も大わらわ。果たして負担軽減になるのか。

 前出の浦野氏が言うのだ。

「これまでの帳簿制度で対応できていたのに、わざわざ法律を変える必要があるのでしょうか。中小企業には電子取引の記録であっても紙が便利だからとプリントして保管・使用しているところがあり、電子データの保存は二度手間。改正電帳法で業務が増えてしまったところも多いのです」

 政府に「DX」をやらせたら、こうなるという見本である。

週刊新潮 2022年1月20日号掲載

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