“怒りの代償”は高くついた? 八つ当たりで負傷した選手の「気になるその後」

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王監督はカンカン

 前出の豊田同様、“短気は損気”の言葉を胸に刻むことになったのが、ダイエー時代の杉内俊哉だ。04年6月1日のロッテ戦、ダイエーの先発・杉内は福浦に満塁本塁打を浴びるなど、1、2回に計7点を失う乱調。2回表の守備を終えてベンチに引き揚げると、悔しさをあらわにして、ベンチ奥の列のイスに帽子とグラブを叩きつける。

 さらに右拳でイスを殴りはじめ、続いて利き手の左手まで振り上げた。「利き手はやめろ!」。近くにいた捕手・城島健司が慌てて制止したときには、すでに杉内は左拳をイスに向かって振り下ろしていた。この間、わずか数秒間。当初は、特に異変は感じられず、杉内は3回以降も続投の予定だった。

 ところが、2回裏のダイエーの攻撃が進むにつれ、杉内の両手がしだいに赤く腫れ上がってきたため、急きょ、トレーナーとともにベンチ裏に姿を消し、そのまま降板。福岡市内の病院で精密検査を受けたところ、両手の第5中手骨骨折で全治3ヵ月と診断された。

“自業自得”とも言うべき負傷離脱に、王貞治監督は「悔しさは誰でもある。だが、何のために選手としてやっているのか。絶対にやってはいけないことだ」とカンカン。球団からも10日間の謹慎処分と罰金100万円が科せられた。

 杉内は4ヵ月間戦列を離れ、前年の10勝投手を欠いたチームも、2年連続リーグVまで漕ぎつけたものの、プレーオフで2位の西武に敗れて日本シリーズ進出ならず。ベンチを殴打した代償は高くついた。

「プロらしくないことをやってしまった。来年は今年の分までやらないといけない」と反省した杉内は、翌05年に18勝4敗、防御率2.11で、最多勝、最優秀防御率、MVP、沢村賞に輝き、見事に有言実行をはたしている。

久保田龍雄(くぼた・たつお) 1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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