「数学のお兄さん」横山明日希の誕生秘話 「数学の楽しさを伝えるプロ」を目指した理由とは

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「数学のお兄さん」が生まれた瞬間

 ある日、1年で辞めたスキーサークルの友人(彼も同じ時期にサークルを辞めていた)と再会し、彼の誘いを受けて何人かの起業家と会うことになった。これだけ書くと何か怪しげな団体に連れて行かれたと誤解されかねないが、「創業して間もない人たちが集まるコミュニティー」であり、もちろん健全な集まりに参加したのである。

 学生は僕と僕を誘った彼の二人だけであるが、大人たちは優しくしてくれた。そして、優しさと共に現実を突き付ける「君は将来何がしたいの?」という問いかけを何度も受けることになったのだ。答えられない僕の様子を見ながら、続けて「じゃあ、好きなことはなに? いくつか言ってごらん」と言う。そこで「数学が好きで、お笑いとか…楽しい雰囲気が好きです」と答えると「いいじゃん、それと向き合おうよ」と。とっさの返答だったが、それはストンと自分でも腑に落ちた瞬間だった。「そうか、僕は数学を楽しむ場が作りたいんだ」と、これまでの数学との向き合い方をはっきりと言語化できた瞬間だった。それから数日後、僕は「数学のお兄さん」を名乗り、大勢の人が数学を楽しめる切り口を探す試行錯誤の生活が始まったのだ。

 それから数年、ここで語りきれないほどの試行錯誤の末、「数学の楽しさを伝える仕事」をしている今がある。ささいなきっかけで自分の将来の夢が見つかるという自身の体験があるからこそ、数学という切り口で、僕は同じような小さなきっかけを作り続けたいと思う。

横山明日希(よこやま・あすき)
数学のお兄さん。算数・数学の学びが楽しい!と思える“機会”や“体験”を提供する 株式会社math channel代表。著書に『面白くてやみつきになる! 文系も超ハマる数学』など。

デイリー新潮編集部

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