エッセイスト・安西カオリの人生の相棒は? 自転車が気付かせてくれた都市と町の魅力

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川沿いのサイクリング

 ある時、新潟に行く機会があり、思い切って村上まで足を延ばした。ただ電車の本数は少なく、村上での滞在時間は限られる。駅の観光案内所で鮭の博物館であるイヨボヤ会館を案内され、まず向かった。村上では鮭の命を大切に考え、頭やエラ、骨や皮まで残すところなくいただく習慣があり、数多くの鮭料理が存在する。

 建物には天井から塩引き鮭が何匹もぶら下がっている。その下に数台の自転車が置かれてあった。自転車を貸し出していたのだ。村上で行きたい場所はばらばらでバスで移動するのでは時間が足りないとあきらめていた。すぐ申し込むとまず内陸方面に向かった。朝日連峰を望む川沿いのサイクリングは清々しく来て良かったと思った。レンタサイクルのおかげで、海近くにある瀬波温泉の足湯に浸かる時間まで作ることができた。

 自転車さえあればどこにでも行ける。ミッフィーを描き続けたディック・ブルーナさんは、アトリエまで自転車で通っていたそうである。景色を見ながら作品のアイデアを得ることもあったという。もしも車に乗れなくなっても、自転車には安全運転で乗り続けていたい。

安西カオリ(あんざい・かおり)
エッセイスト、絵本作家。故・安西水丸氏長女。最新刊は『ブルーインク・ストーリー―父・安西水丸のこと― 』。

デイリー新潮編集部

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